エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない～離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます～

『私は須和さんを一人の男性として慕っています。もし奥様と離婚されるのなら恋人関係になりたいと思っているんです』

彼女が自信に溢れて口にした言葉を、今でも鮮明に思い出す。

男女の関係だとはっきり宣言された訳ではないけれど、何も無いとは考えられない。

（そうじゃなければ、上司の奥さんに彼が好きですなんて言う訳ないもの）

あれは問題になったときに、一哉が自分を庇ってくれると信じているから言える台詞。

それに、仕事中の一哉に電話をしたら真咲が出た件もある。

彼女は彼が寝ているところだからと自己判断で取次を断り、澄夏は一哉と話すことが出来なかった。

普通は上司や同僚の妻を勝手に突っぱねたりはしない。

どう考えて特別な関係だ。彼女の前で無防備に寝ているという状況自体あり得ないのだし。

（なかったことには出来ない）

「……以前、一哉さんと一緒にうちに来た南雲さんなんだけど」

「彼女がどうかしたか？」

南雲真咲の名前を出してみる。一哉は動揺するかと思ったが、彼は慌てると言うより急に話題が変わったことに戸惑っているようだ。

「彼女が以前話していた、信頼出来る部下なんでしょう？」