エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
「ああ。覚えていたんだな」

「うん、仕事中一哉さんをフォローしてくれているのは、どんな人なのかなと気になっていたから」

「彼女は俺より二歳年下で役職は係長だ。後輩のような感覚だな」

「後輩……」

一哉は真咲の件は隠し通すつもりなのだろうか。

「ああ。年が近いから話も合うし、熱意を持って働く姿勢は尊敬出来るし、仕事の考え方も近い。打てば響く反応もやりやすいな」

べた褒めなところから彼が彼女を相当気に入っているのは間違いないようだ。

「南雲さんも一哉さんみたいに遅くまで残業しているんでしょう? 私より長い時間を一緒に過ごしてたんだね」

彼が真咲に好意を抱いているのは確かだろう。

一哉は澄夏の質問の意図が読めないようで、戸惑った様子だ。

(やっぱり私には無理)

いくら愛していると言ってくれても、一哉に離婚する気がなくても、真咲との関係を疑う気持ちは晴れない。

今後真咲から一哉へのアプロ―チが増す可能性も高く不安は尽きない。

元に戻っても心を病んでいた不健康な頃に逆戻りするだけ。

澄香が黙り込むと、一哉が「さっきの話しだけど」と話題を戻した。
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