エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
「澄夏に俺の気持ちが伝わっていなかったのは、俺の気持ちを押しつけ過ぎても澄夏の負担になるだけだと遠慮し過ぎたからだと思う。でも言葉が足りなかったんだな。今更ながら後悔している」

「後悔?」

「お義父さんの落選が原因で澄夏が離婚を考えてしまう。その程度の関係しか築けなかった自分を悔やんでるんだ」

父の落選を大した問題でもないように言う一哉に驚いた。

「でも一哉さんは政治家になりたくて私と結婚したんでしょう? お見合いの時にそう言ってたから私は……」

「政界進出は目標だけど、澄香を失ってまで叶えたい夢じゃない」

「え……」

「俺にとって一番大切なのは澄夏だから」

一哉が切なそうに、でもはっきりと言う。

(一哉さんは、お父さんの力は関係なく、私自身を必要としてくれてるの?)

「本当に一哉さんは離婚を考えたことがないの?」

迷って悩んで苦しんでいたのは澄夏だけだったのだろうか。

「もちろん。実は夫婦仲はそれなりに上手くいっていると思ってたんだ。澄夏の気持ちが離れているのに気付いたのは、離れて暮らすようになってかららだ」

どうして気付いたの?と疑問を抱いたのが顔に出たのだろう。
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