エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
義父をはじめとした一哉の家族が心配していること。彼本人が気にしないと言っても周りはそうは思わないだろう。

南雲真咲とは職場が同じで、澄香にはふたりがどう過ごしているのか知る術がないのだから。

一哉を信じて過ごす強い心を保つ自信が持てない。

黙ったままの澄夏にがっかりしたのか、一哉が顔を曇らせた。

「澄夏が望んでも俺はこのまま別れる気はない。一度家に戻ってきてくれないか? しっかり話し合いたい」

「家で?」

「ここじゃ言えないこともある。周りを気にせず気持ちを伝えたいんだ」

一哉の目は真剣だ。彼の決意は固く、澄夏がなにを言ってもその決意は揺らぎそうにない。

「……分かった。連休の後半に一度帰ります」

彼の想いを初めて知り澄夏も考えが纏まっていない。一度時間を置く方がいいかもしれない。

「ありがとう。よかった」

一哉がほっとしたように微笑みを浮かべる。こんなときだというのに、綺麗なその表情にどきりとした。

「あの、そのとき私からも聞きたいことがあるから」

「なんだろう?」

「私もここでは言いたくない」

「分かった。それなら家で聞く。なんでも答えるから」

「ありがとう……」
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