エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
頷く澄夏を一哉は優しい目で見つめる。

(一哉さん嬉しそう……私が譲歩したから? まさか)

彼だったら澄夏と別れたとしても、いくらでも次の相手がいるはずなのに。

(本当に私だけを好きでいてくれてるの? 南雲さんの関係はなにか事情が?)

彼の表情から読み取れないかとじっと見つめたままでいたら、一哉が困ったような苦笑いになった。

「あまり見つめられると照れるな」

「あ、ごめんなさい」

「いや、嬉しいよ。拒否されるよりずっと幸せだ」

一哉はそう言いながら、テーブルの端に立てかけてあったメニューを手に取る。

「せっかくだから食事をしたいな。中途半端な時間だけど、澄夏は食べられそうか?」

「ええ、今日は朝ごはんを抜いたから」

彼との話し合いだと思うと、食欲なんてまるで湧かなかった。

「それならちょうどいい」

一哉は嬉しそうに言い、メニューに視線を走らせる。

「ローストビーフハンバーグか、上手そうだな」

この店一番のお薦めらしく、メニューの一番目立つところに写真が載っている。
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