エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない～離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます～

ハンバーグをローストビーフが包み、その上からたっぷりとデミグラスソースがかかった食欲をそそるものだが、澄夏はまだ頼んだことがない。ボリューム満点で食べきる自信がないからだ。

「一哉さん、お腹ぺこぺこなんだね」
「実は俺も朝食抜きなんだ。らしくもなく緊張していて」
「一哉さんが緊張？　すごく意外。メンタル強いのに」

陸上競技でも常に本番で最高のパフォーマンスを発揮していたと聞いているし、大学受験でも、模試の判定では厳しいところ本番では百二十パーセントの実力を発揮して合格。

いざというときに結果を出すところに、彼の勝負強さが現れている。

それは心の強さから来るものだと思っていた。

けれど一哉は、否定するように首を横に振る。

「澄夏に関してはそうでもない。なにを言われるのか結構不安だったんだ。離婚って想像以上の宣言をされて逆に開き直ったけどな」

彼は最後は少し冗談っぽいく言い、「澄夏はなににする？」とメニューを差し出してきた。