エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
サボっていると思われたくなくて、一生懸命清掃に取り組む。
だけど小さく砕けた殻を都度地面に屈んで拾う作業は、運動が苦手で体力が無い澄夏には結構きつい。

しばらくすると地元で一番大きな岩倉神社に続く長い階段に辿り着いた。

ここはパワースポットだと有名で、他県からも人が集まる。名称が偶然澄夏の苗字と同じだが直接的な関係はない。

七月の気温は高く、噴き出す汗が体にまとわりつく。喉はカラカラだし、さすがにもう限界だった。

(少しだけなら大丈夫だよね)

キョロキョロと周囲を見回し、こっそり休めそうなところを探してみる。

するとちょうどよさそうな大きな樹木を見つけたので移動して、日陰になるところに座り込んだ。

気温は変らないはずだけれど、樹々の間を通る風は爽やかな感じがして、ほっと一息つけた気分になった。

「あー疲れた」

誰もいない安心感と、無言で作業していた反動があるのか澄夏にしては珍しく大きな声で独り言を言ってから、持参していた水筒を取り出す。

風が通り葉が揺れる音と、それ以上に大きな蝉の声が辺りに響く。

「蝉の声大きすぎるよね。急かされてるみたい」
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