エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
彼からは澄夏とは対照的な冷静な淡々とした言葉が帰って来た。それにより恥ずかしい独り言は全て聞かれたと判明した。

「そうなんですね……すみません、全然気づかなくて変な独り言を言ってしまって……邪魔をしてしまいましたよね」

彼だって何等かの事情があるからこんな人気がないところに居たのだろう。すぐに立ち去らなくては。

「俺に気を遣わなくていいから休憩してろよ。ずっと真面目にゴミ拾いしていたから疲れてるだろうし」

 予想外な内容と、気さくな口調に澄夏は驚き瞬きをした。

「は、はい。でもどうしてそれを?」
「俺もゴミ拾いに参加してるんだよ。真面目だなって感心して見てた」
「そ、そうなんですか……」

突然憧れの人と話すことになったものだから、澄夏の心臓はバクバクと落ち着かない。

緊張しながら会話をしているうちに、彼の顔色が優れないことに気がついた。

具合が悪いのかと聞いてみると、寝不足との返事でどうやら何か悩みがあるようだ。

「例えば、何かやりたいことが有ったとして、それがみんなの期待を裏切る結果になったとしても、気持ちを貫くべきか……」

彼のイメージとは違い、声が小さく歯切れ悪い口調だった。
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