エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない～離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます～

澄夏に返事をしていると言うより、無意識に出た独り言なのかもしれない。

けれど、澄夏はそれこそが彼の悩みなのだろうと、真剣に受け止めた。

（自分のやりたいことをしたら、周りの人ががっかりするって話かな？）

一哉ほどの有名スポーツ選手だったら周りの期待が大きそうだ。澄夏のような普通の学生では想像できないようなプレッシャーとか悩みがあるのかもしれない。

（みんなが憧れる人だけど、私と同じように悩んだりするんだな）

そんなことを考えながら澄夏は口を開いた。彼の悩みに共感するのは難しいけれど、それでも何か言って励ましたかった。

「あの、もし私だったら自分の気持ちを優先すると思います。だって周りの期待に応えて将来を決めてもし後悔したら、その人たちのせいだと思ってしまうかもしれない。なにかを決めるときは覚悟と責任を持たないといけないそうです。たとえ失敗しても自分のせいです。それ程の決意をするにはやっぱり本当にやりたい道に進まないと駄目な気がします。私は……」