エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない～離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます～
正直言うと半分以上は父の受け売りだった。

覚悟と責任については日ごろ父から耳が痛くなるくらい聞かされている為、今も自然と口から出て来た。

だけど的外れな発言だったかもしれない。

失敗したかなと焦っていると一哉がもたれていた樹木から体を起こした。

「貴重な意見ありがとう」
「え？」

ほっとしたのと同時に、澄夏を見下ろしていた一哉が手を伸ばして来た。そして驚き瞬きをした澄夏の髪に触れる直前で手を引っ込める。その手には、小さな葉っぱが一枚あった。

（髪についた葉っぱを取ってくれたんだ）

「ありがとうございます」

お礼を言うと彼は小さな笑みで応えた。

「そろそろ行くよ。この辺の殻ごみは俺が拾っておくから、君はもう少しゆっくりしてから集合場所に戻るといい」

「あ、はい」

一哉は「じゃあ、また」と言い、広い歩幅で階段の方に向かって行く。どうやらボランティア活動を再開するようだ。

彼の後ろ姿が小さくなると、辺りに静けさが戻って来た。

その後少し休んでから澄夏は集合場所に向かった。

途中殻が落ちていないかチェックをしていく。
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