エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
今も何かしようとしていたのかもしれない。

すぐさま彼女を問い詰めたい衝動にかられた。上手く誘導尋問し、しらを切らないようにさせたい。

しかし話し合いが揉めて争いに発展した場合、彼女がどんな態度を取るのか予想がつかない。

もし仕事を放棄するようなことがあったら? 彼女が抜けた穴は同僚たちが埋めることになるし、仕事のクオリティが低下するだろう。

そんな事態にはならないと信じたいが、今の一哉に真咲を信用するのは難しい。

感情のまま動くことは出来なかった。

六月になれば今より余裕が出来るから、そこまで待とう。

そう決めて真咲に詰め寄るのは避けたが、彼女は一哉の心情の変化を敏感に察したようだった。その後もこちらを探る様子をときどき見せるなど、彼女側も態度が変化していた。

それを気まずく感じたが、まさか高畑に気付かれていたとは[Ya143]。

「お前、今回異動の可能性高いよな」

心の中で憂鬱な溜息を吐いたのと同時に、高畑の声が耳に届いた

「ああ……そうだな」

霞が関では七月に人事異動がある。年度末でもない中途半端な時期なのは、通常国会の閉会後としているからだ。
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