エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
希望は官僚を目指した頃から変わらず、地方の企業活動促進を担当する課だが、どこに行っても真摯に取り組むつもりだ。そうやってこれまでやって来た。

異動になれば、真咲と関わる必要はないし、なにか有っても仕事で迷惑をかける心配はなくなる。その日まで現在の微妙なバランスを保ち、時間の経過を待つつもりだった。

しかし昨夜、澄夏と過ごしているプライベートの時間に、真咲が電話をかけてきた。応答しなかったけれど、今日にでも彼女からなにか言われるかもしれない。

忙しいのはいつものことながら、今日は予定外の業務が入り、息をつく間も無い程だった。

法案作成は官僚の重要な仕事だが、ただ席でパソコンに向かっていればいいという訳ではない。
下調べはもちろんのこと、関連部所との連携や民間人へのヒアリングなど、やる事は山積みだ。

部下の仕事に気を使う必要があるし、いくつもの案件を平行して行っている場合、全くと言っていい程余裕がない。

一哉がパソコンの画面から視線を上げ、何気なくフロアの様子に目を遣ると、自分と同じような状況の高畑が不機嫌そうに眉をひそめていた。

(完全な人手不足だよな)
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