エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
世間では暇な公務員とか、浮世離れした感覚のエリート官僚などと言われるが、実際はそんな気楽で優雅なものじゃない。

一哉が入庁したときに比べてひとりあたりの業務料と責任は増えているのに、増員はない。どこも人は余ってなくてギリギリの人数で回している。

本当はもう少し余裕を持ってきめ細かな仕事をしたい。しかし実際はそうもいかないのが悩ましいところだ。

きりが良いところで一哉は席を立った。

時刻は既に午後十時三十分。

少し休憩を取ってからラストスパートに入ろうと、リフレッシュコーナーに向かう。

他の職員の姿は見当たらずガランとしていた。

自動販売機でいつもの缶コーヒーを購入して、適当なソファに腰を下ろす。

それ程長居する気はないので、一気にコーヒーを飲み干し立ち上がろうとしたとき、人が近づく気配を感じた。

目をやると南雲真咲がこちらに来るところで、一哉は思わず眉を顰めた。

真咲は対照的に楽しそうな笑みを浮かべている。

「お疲れさまです」
「お疲れさま」

一哉が答えると、彼女は断りなく隣に腰を下ろしてきた。

「まだかかりそうですか?」
「あとひと息だ」
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