エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
「そうは思わない。電話に出たことに理由があったとしても、その件について俺に一切の報告がなかった。君がうっかり忘れるなんて考えられないから故意になんだろう」

人気のない休憩スペースに、冷え冷えとした一哉の声が響いた。

「悪気はなかったんです」

真咲はそう言い、目を伏せた。

もっと言いたいことはあるが、一哉はそれらをのみ込み立ち上がった。

「公私混同になっていたようだ。これからはお互い気を付けよう」

彼女は落ち込んでいる様子だし、これで収めるしかなさそうだ。

澄夏に誤解を与え苦しめたのは許しがたいが、同僚として助けられてきた事実は間違いない。
そもそも一番悪いのは、真咲を伴い自宅に帰ったり、携帯の管理が甘かった自分なのだから。

不服な思いを割り切り去ろうとしたそのとき、真咲が勢いよく立ち上がり一哉の腕を掴んできた。

「待ってください!」

驚きながらも一歩後ろに下がり、彼女の腕から離れ顔をしかめた。

「落ち着け」

「私がどうして、奥様から電話がきたと伝えなかったのか分かりますか?」

真咲の今までにない必死な様子に違和感を覚えながら、一哉は答える。

「悪いが、最近の君の行動は理解出来ない」
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