エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
それは地元を豊かに盛り上げたい一心だ。将来のビジョンが近い澄夏の父とのコネをフルに活用して、大分先の計画まで立てていた。それが父の落選で見通しが立たなくなった。

実際は代議士じゃなくなったからといって、コネや影響力全てを失った訳じゃない。以前程ではないが父にも出来ることがあるだろう。

ただ問題は本人がやる気を喪失しているところなのだ。

だからこそ一哉の両親は、早く立ち直り前を向いて欲しいと思っているのだと思う。

炊きつけるような言い方になるのは元からの性格によるもので、きっと悪気はない。

「お父さんも早く前向きになってくれたらいいんだけど。そうすればお母さんも元気になるはずなのに」

「お義母さんが? 怪我で入院しているんじゃなかったのか?」

一哉が不思議そうな顔をした。

「入院したきっかけは怪我なんだけど、メンタルもあまりよくなくて。お父さんの無気力に影響されてるみたいなの」

母は必要とされていない状況が辛いと言っていた。その気持ちは痛い程分かるからこそ、回復へ向かうには父の変化が必要なのだと確信している。

「そうなのか。でもお義父さんに無理を言っても良い結果になるとは思えないしな」
< 171 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop