エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
「そうなんだよね」

溜息をつきたくなるような話だけれど、以前よりは気が楽だった。

それは一哉が寄り添ってくれているのを感じるようになったから。

(彼の態度だけじゃなくて、私の心持ちが変わったのもあるんだろうけど)

傷つかないように壁を作っていたことで鈍感になっていたのだ。

思っていることがすぐに顔に出てしまい彼に見透かされてばかりだけれど、この方がずっと居心地がいい。

「あまり考えていても仕方ないか。なんとかなると信じよう」

「うん」

「隠し事はなしだからな? なにか言われたらすぐ俺に言えよ?」

念押ししてくる彼に、澄夏は微笑んで頷く。彼の前向きさが伝わってきて、重苦しい気持ちが和らいだのだ。すると肩を抱き寄せられた。

「早く諸問題を解決させて、澄夏とのんびり過ごしたいな」

「さっきテレビで見た、南の島のヴィラでゆっくりなんて良さそうだよね。昼間はプライベートプールで過ごして、夜は美味しい食事をして」

想像するだけで気持ちが浮き立つ。

一哉の仕事の都合で新婚旅行が無かったので、ふたりきりで旅に出た経験がないのだ。

実際いつ行けるのか見通しは立たないけれど、いつかはと願っている。
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