エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
エピローグ
楽しかった夏休みが終わり、日々は平常運転になった。
一哉は朝から晩まで仕事で、澄夏は家のことをこなしていく。
相変らず一緒に過ごせる時間は少ないけれど、お互いを尊重して信じる今、家庭は円満で波風など一切立たない。
そんな順調なある日、澄夏は深夜帰宅した夫を玄関で出迎えた。
深刻な表情になっていたのか、一哉の顔がたちまち強張る。
「どうした? 大丈夫か?」
疲れているはずなのに、そんなことを忘れたように澄夏を心配する夫。
澄夏はにこりと微笑んだ。
「大丈夫。すぐに伝えたくて」
「伝えたい? 怖い顔をしていたが」
「だって油断してたら顔が緩んじゃうから。一哉さん、私たちの赤ちゃんが出来たの」
まだぺたんこのお腹にそっと手を添えながら言う。
すると彼は信じられないと言った様子で息を呑み、それから破顔した。
「すごい……すごいぞ、澄夏!」
一哉は喜びを抑えきれないと言ったように澄夏をぎゅっと抱きしめる。
夫は喜ぶと信じていたけれど、それでも彼にしては珍しい程感情が露わになっている。
「ここに俺たちの子が……感無量だよな」
「うん」
「早く会いたいな。名前も考えないと」
「一哉さんったら気が早いよ」
くすりと笑いながら言うと、一哉も微笑み澄夏を優しく抱きしめる。
いつだって澄夏を守ってくれる頼りになる腕。きっと子供のことも慈しんでくれるだろう。
三人で笑い合う家族の光景が浮かんでくる。ああ幸せだ……澄夏は心から微笑んだ。
END