エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
岩倉家からは灯りが消えたように、活気というものがまるでなくなってしまったのだから。

それ以降、澄夏は結婚と同時に入居した霞が関近くのマンションから、実家がある北関東の町にときどき帰り、母の見舞いや家の細々した管理を手伝っている。

そのため家を空ける機会が増えたけれど、夫は何も言って来ない。

一見いつもと変わらず、淡々と過ごしているように見えるし、彼自身に「俺のことは気にしなくていいから」と言われている。

だけど、澄夏は政治家の娘だ。
通常国会が開かれている今の時期、三十歳の若手官僚である彼がどれほど多忙かはよく分かっている。

(それなのに彼のフォローが出来ないなんて)

妻なのに肝心なときに力になれないのが辛い。

自分の存在価値がなくなっていくような気になる。

(このまま一哉さんの妻でいていいのかな)

恋愛結婚だったらこんな風に思い詰めたりしなかったかもしれない。

けれどふたりは条件ありきのお見合い結婚で、地元で会社経営をしている一哉の家は澄夏の父の政治家としての影響力を必要としていた。

それなのに今では政略結婚の意味がなくなっている。
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