エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
不本意な別居 ~一哉side~
四月最終週の木曜日。
一哉の勤める経済産業省政策局では、同僚たちが解放感に浸っていた。
「あーついに休める!」
明日からはゴールデンウイークに突入する。通常業務に加えて国会対応に奔走していた一哉たちもようやく一息つけるのだ。
同僚のテンションが上がるのも理解出来る。
一哉は先送りに出来ない処理の最終確認をしてから、パソコンの電源を落とした。
時刻は夜八時半。ここ一カ月間で最速の業務終了時間だ。
「須和、飲みに行くぞ」
帰る準備をしていると、同僚の高畑(たかはた)が声をかけてきた。見れば数人がフロアの出入り口で待っている。
「悪い、今日はやめとく」
高畑は一哉より二歳年上だが、同期入庁の為上下関係はない。よい友人と言える関係だ。
「そうか、残念だけど須和は家庭があるから仕方ないな」
高畑は特に気分を害した様子はなく、軽い足取りで待っていた後輩たちの方に向かい合流する。
そして仕事の疲れなんて無かったかのように、溌剌とした様子でフロアを出て行った。
「元気ねえ」
一哉のすぐ側から滑らかな声がした。