エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
「おい、俺には気を使わなくっていいのか?」

真咲もくすりと笑う。華やかさと大人の女性の色気を帯びたその表情は、多くの男が落ちるような魅力的なものだ。

「信用してるんですよ」

真咲が一歩一哉に近付いてきた。上目遣いで見つめられて一哉の戸惑いは更に大きくなる。

まるで誘われているような気になるのだ。

学生時代から現時点まで一哉にアプローチしてくる女性はそれなりにいて中にはあからさまなベッドへの誘いをかけてくる相手もいた。

よく知らない相手になぜそこまで迫れるのか理解出来なかったし、自己中心的な積極性に辟易としたことが何度もある。

真咲は当然そんな人格ではないが、なぜか今、同じような拒否感を覚えてしまった。

(いくらなんでも彼女に失礼だ)

一哉は自己嫌悪に陥りながら、表面上は先輩としての穏やかな笑みを崩さなかった。

「光栄だし頑張ってくれた部下を労わりたい気持ちはあるけど、次の機会にさせてくれ。これから外せない用があるんだ」
「こんな時間から? ……それなら仕方ないですね」
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