エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
気になったが霞が関の駅に到着した。彼女はたしか反対方向だ。

(疲れて気が立っているんだろうな。久しぶりに仕事から離れたら治るだろう)

「それじゃあここで。ゆっくり休めよ」
「……はい」

真咲はかなり不満そうだった。やはり一哉が誘いを断ったのが気に入らないのだろうか。

しかし彼女は不機嫌さを回りに当たり散らす性格ではない。少なくとも今まではそうだった。いつにない気まずさと違和感を覚えながら真咲と別れる。

後味の悪さを感じていたが、ホームに滑り込んできた電車に乗ると、真咲との会話は頭から消えて妻のことばかりが占めた。

(早く顔を見たいな)

さすがにこれほど離れていると忍耐が尽きそうだ。

本当は一日だって離れたくないと言うのに。

彼女の実家、岩倉家が今困難な状況だと分かっているから言えなかったけれど、そうでなければ行かないでくれと止めただろう。

澄夏のいない自宅は味気なくて寂しい。

それにたった半月の一人暮らしだというのに、部屋がすさんだ気がするのはなぜだろうか。

一哉にもひとり暮らしの経験があり、全く家事が出来ないという訳ではないのに。
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