エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
「え、同じ年なの? それで起業するなんて凄いね」
《うん。でも私たちもあと二年で三十歳じゃない? 独立する人が増えてくる年なんだよね》
瀬奈の何気ない言葉に、澄夏は目を伏せた。
夢を叶えていく人たちに比べて実家の問題で右往左往するばかりの自分が情けなくて焦燥感のようなものが生まれたのだ。
《カフェの住所送るよ。次に実家に戻るときに寄ってみてよ》
「そうする」
《そのとき会えたらいいんだけどね、久しぶりに須和さんの顔も見たいし》
「一哉さんは、無理だと思うよ」
《そうなの? まあ不夜城で働く官僚だからね、仕方ないか》
瀬奈はとても残念そうに呟く。
「瀬奈ったらまだ一哉さんのファンなの?」
《当然じゃない。私の目標だったんだから。一哉さんの走る姿がいかに最高だったか、澄夏だって忘れてないでしょ?》
「それはもちろん」
忘れる訳がない。もう十年以上前。日差しが降り注ぐ陸上競技場で走る彼の姿を見て、澄夏は初めての恋をしたのだから――。
《うん。でも私たちもあと二年で三十歳じゃない? 独立する人が増えてくる年なんだよね》
瀬奈の何気ない言葉に、澄夏は目を伏せた。
夢を叶えていく人たちに比べて実家の問題で右往左往するばかりの自分が情けなくて焦燥感のようなものが生まれたのだ。
《カフェの住所送るよ。次に実家に戻るときに寄ってみてよ》
「そうする」
《そのとき会えたらいいんだけどね、久しぶりに須和さんの顔も見たいし》
「一哉さんは、無理だと思うよ」
《そうなの? まあ不夜城で働く官僚だからね、仕方ないか》
瀬奈はとても残念そうに呟く。
「瀬奈ったらまだ一哉さんのファンなの?」
《当然じゃない。私の目標だったんだから。一哉さんの走る姿がいかに最高だったか、澄夏だって忘れてないでしょ?》
「それはもちろん」
忘れる訳がない。もう十年以上前。日差しが降り注ぐ陸上競技場で走る彼の姿を見て、澄夏は初めての恋をしたのだから――。