シークレットの標的(ターゲット)
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週明けの月曜日、
遅刻ギリギリで出勤するとなぜかオフィス内がざわざわしている。
「大島さん、大島さん」
隣のデスクのナーススッタフの藤田さんが小声で囁き私の袖を引っ張った。
「どうしたの?」
「松平主任がちょっとーーー」
松平主任の名前が出てきて思ったのは、主任が事後処理とか宮本さんのショックで忙しいか気落ちしているのかということだった。
「大島さんは主任があんな美人だって知ってました?」
「は?」
藤田さんがキラキラした目で松平主任のデスクに視線を向ける。
私も見てみるけれど、デスクは空で主任は席を外していた。
「だから私は主任が嫌いだったんですよ。あんなにいいものを持っているのにわざと野暮ったくして隠しているんだもの。あんなの嫌味にしか見えないじゃないですか。ほんっと嫌がらせかっつーの」
向かいの席から小池さんがふくれっ面で話に入ってきた。
「あんなに綺麗なのにどうして今まで隠してたんでしょうね」
藤田さんと小池さんの話で主任が今日は例の変装もどきをしていないのだとわかった。
「小池さんが主任のこと嫌ってたのはそういうことだったの?ウマが合わないとか注意されるのがイヤなのかと思ってたわ」
「まあ細かく注意されるのもいい気はしませんけど、あのわざと隠してますって嫌味なところが許しがたかったんです。こっちは努力して磨いて磨いてやっとこの程度なのに、なんですか、あれ。天から授かったものをわざと隠して。どんな嫌味なんだって」
ははー、なるほど。
まあ小池さんの言わんとしていることもわからなくはない。
嫌味じゃないけど、嫌味だと捉える人がいてもおかしくないというほど松平主任は美人だ。
だけど、もう長いこと隠してきていたのにどうしたんだろう。
そう話していると、室内のざわめきが大きくなり主任がデスクに戻ってきた。
はああ~うんうん。
今日はあの鬱陶しい眼鏡を外していて長めの前髪もすっきりしていて、あのお綺麗なお顔が見える範囲が格段に広い。いつも後ろで1つにまとめられるかお団子にされていたさらさらストレートヘアはセミロングになりパーマがかかっていて雰囲気がまるで違う。
しかもわざと作られたもっさり眉メイクもなく、シンプルなナチュラルメイクという出で立ちだった。
確かに小池さんの言うとおりあの美形を隠しているのは神への冒涜だと思うけど、旦那さんが嫌がるからもう10年近くも素顔を隠してきたって言っていたそれはもうよくなったんだろうか。
始業の時間になり皆立ち上がり事務職の課長のデスク回りに集まった。
課長の朝の挨拶からはじまったミーティングだけど、皆の意識は松平主任に向いていることは歴然とした事実だった。
今週の特別業務と今日の業務の簡単な確認だけで解散となったけれど、主任の顔色が悪いことが気になって足の報告がてらすぐに主任のデスクに向かった。
「主任、金曜日は早退させていただき申し訳ありませんでした。足の方はおかげさまでまだパンプスは履けませんが落ち着いていますので通常業務に戻していただいて構いません」
「それはよかったわ。ーーーでも心配だから午前の診療開始前に草刈先生に診察してもらいましょうか」
そう言って立ち上がると、
「小池さん、大島さんの診察でちょっと席を外すからよろしく」
なんと小池さんにあとをお願いした。
「はーい、わかりましたー。いってらっしゃい」
小池さんは不承不承ながらという感じで返事をしている。
実はこの二人見た目よりうまくやれているのかもしれないなんて思ってしまい苦笑した。
週明けの月曜日、
遅刻ギリギリで出勤するとなぜかオフィス内がざわざわしている。
「大島さん、大島さん」
隣のデスクのナーススッタフの藤田さんが小声で囁き私の袖を引っ張った。
「どうしたの?」
「松平主任がちょっとーーー」
松平主任の名前が出てきて思ったのは、主任が事後処理とか宮本さんのショックで忙しいか気落ちしているのかということだった。
「大島さんは主任があんな美人だって知ってました?」
「は?」
藤田さんがキラキラした目で松平主任のデスクに視線を向ける。
私も見てみるけれど、デスクは空で主任は席を外していた。
「だから私は主任が嫌いだったんですよ。あんなにいいものを持っているのにわざと野暮ったくして隠しているんだもの。あんなの嫌味にしか見えないじゃないですか。ほんっと嫌がらせかっつーの」
向かいの席から小池さんがふくれっ面で話に入ってきた。
「あんなに綺麗なのにどうして今まで隠してたんでしょうね」
藤田さんと小池さんの話で主任が今日は例の変装もどきをしていないのだとわかった。
「小池さんが主任のこと嫌ってたのはそういうことだったの?ウマが合わないとか注意されるのがイヤなのかと思ってたわ」
「まあ細かく注意されるのもいい気はしませんけど、あのわざと隠してますって嫌味なところが許しがたかったんです。こっちは努力して磨いて磨いてやっとこの程度なのに、なんですか、あれ。天から授かったものをわざと隠して。どんな嫌味なんだって」
ははー、なるほど。
まあ小池さんの言わんとしていることもわからなくはない。
嫌味じゃないけど、嫌味だと捉える人がいてもおかしくないというほど松平主任は美人だ。
だけど、もう長いこと隠してきていたのにどうしたんだろう。
そう話していると、室内のざわめきが大きくなり主任がデスクに戻ってきた。
はああ~うんうん。
今日はあの鬱陶しい眼鏡を外していて長めの前髪もすっきりしていて、あのお綺麗なお顔が見える範囲が格段に広い。いつも後ろで1つにまとめられるかお団子にされていたさらさらストレートヘアはセミロングになりパーマがかかっていて雰囲気がまるで違う。
しかもわざと作られたもっさり眉メイクもなく、シンプルなナチュラルメイクという出で立ちだった。
確かに小池さんの言うとおりあの美形を隠しているのは神への冒涜だと思うけど、旦那さんが嫌がるからもう10年近くも素顔を隠してきたって言っていたそれはもうよくなったんだろうか。
始業の時間になり皆立ち上がり事務職の課長のデスク回りに集まった。
課長の朝の挨拶からはじまったミーティングだけど、皆の意識は松平主任に向いていることは歴然とした事実だった。
今週の特別業務と今日の業務の簡単な確認だけで解散となったけれど、主任の顔色が悪いことが気になって足の報告がてらすぐに主任のデスクに向かった。
「主任、金曜日は早退させていただき申し訳ありませんでした。足の方はおかげさまでまだパンプスは履けませんが落ち着いていますので通常業務に戻していただいて構いません」
「それはよかったわ。ーーーでも心配だから午前の診療開始前に草刈先生に診察してもらいましょうか」
そう言って立ち上がると、
「小池さん、大島さんの診察でちょっと席を外すからよろしく」
なんと小池さんにあとをお願いした。
「はーい、わかりましたー。いってらっしゃい」
小池さんは不承不承ながらという感じで返事をしている。
実はこの二人見た目よりうまくやれているのかもしれないなんて思ってしまい苦笑した。