シークレットの標的(ターゲット)
「のんちゃん、今夜ご飯食べに行こうよ。ご馳走するから。いろいろ迷惑かけちゃったしお詫びさせて欲しいんだ。ご飯くらいじゃお詫びにならないだろうけど。エスコート役に海事の小林くんも連れてくね」
食事のお誘いもエスコート役の話もいきなりすぎて思わず後退りしそうになる。
「それにね、うちの綾夜のことも感謝してるんだよ。草刈先生やのんちゃんがフォローしてくれているから綾夜もなんとか主任としてやれてるし。あの仮装パーティーみたいなお化粧もこのままやめさせたいと思ってるんだ。言い方は悪いけど、今回のことは綾夜にはいいきっかけになるよね」
主任のメイクの話なら私もあの変装メイクはやめてナチュラルにしていただきたい。
でも、常務からのお詫びは畏れ多いし、主任のフォローなんてされた覚えは数多あれどした覚えは皆無だ。
常務のお誘いなんてどうやったら失礼にならずお断りすることができるのだろう。
困って隣に立つ緒方さんの顔をチラリと見ると彼は渋い顔をして常務の顔を見ている。
上司相手にそんな顔して大丈夫なのかなとはらはらしていると常務の笑みが深くなった。
「ボクはねえ、確認したんだよ。お付き合いを公表したときにさ。守るって言うからきちんと守るのかと思ったらずいぶん中途半端だったし、おまけにお互いの気持ちの確認すらきちんとしてなかったってことに呆れちゃって」
私に言っているようで緒方さんに言っているらしく緒方さんの表情が険しくなった。
「ねえ、のんちゃん」
常務のことばのトーンが優しいものに変わる。
「小林くんイタリアから戻ってきて課長に昇進するの。いろいろあって男としても人としても急成長。いい男だし、仕事もできるし、いま恋人もいない。そこにいる緒方くんとはお付き合いしている訳じゃないっていうし、この間、小林くんとお食事デートしたんでしょ。どうだった?楽しかったなら彼と付き合ってみるっていうのも有りだと思うよ。今夜、小林くんを同席させるつもりだから考えてみない?」
「え?」
お詫びの食事会の話がいつの間にか小林さんとのお見合い話にすり変わっていて、常務って面白い人だなとくすりとわらってしまう。
明らかに緒方さんに対するいやがらせ。
「常務」
緒方さんが私を背に隠すようにして一歩前に出た。
「今回俺は確かに対応を間違えましたけど、望海は渡しません。お互いの距離も縮まっているんです。邪魔しないで下さい」
「へえ~、ふう~ん」
常務の目が三日月になり、にやにやとしはじめる。
両手を後ろにまわしてひょいっと緒方さんの後ろにいる私の顔を覗き込んできた。
やだ、動き面白っ。
「のんちゃんはそれでいいの?小林くん、いい男だよね」
「常務っ」
緒方さんの焦った声に思わずぷっと吹き出してしまった。
あのクールな緒方さんはどこにいってしまったんだろう。
食事のお誘いもエスコート役の話もいきなりすぎて思わず後退りしそうになる。
「それにね、うちの綾夜のことも感謝してるんだよ。草刈先生やのんちゃんがフォローしてくれているから綾夜もなんとか主任としてやれてるし。あの仮装パーティーみたいなお化粧もこのままやめさせたいと思ってるんだ。言い方は悪いけど、今回のことは綾夜にはいいきっかけになるよね」
主任のメイクの話なら私もあの変装メイクはやめてナチュラルにしていただきたい。
でも、常務からのお詫びは畏れ多いし、主任のフォローなんてされた覚えは数多あれどした覚えは皆無だ。
常務のお誘いなんてどうやったら失礼にならずお断りすることができるのだろう。
困って隣に立つ緒方さんの顔をチラリと見ると彼は渋い顔をして常務の顔を見ている。
上司相手にそんな顔して大丈夫なのかなとはらはらしていると常務の笑みが深くなった。
「ボクはねえ、確認したんだよ。お付き合いを公表したときにさ。守るって言うからきちんと守るのかと思ったらずいぶん中途半端だったし、おまけにお互いの気持ちの確認すらきちんとしてなかったってことに呆れちゃって」
私に言っているようで緒方さんに言っているらしく緒方さんの表情が険しくなった。
「ねえ、のんちゃん」
常務のことばのトーンが優しいものに変わる。
「小林くんイタリアから戻ってきて課長に昇進するの。いろいろあって男としても人としても急成長。いい男だし、仕事もできるし、いま恋人もいない。そこにいる緒方くんとはお付き合いしている訳じゃないっていうし、この間、小林くんとお食事デートしたんでしょ。どうだった?楽しかったなら彼と付き合ってみるっていうのも有りだと思うよ。今夜、小林くんを同席させるつもりだから考えてみない?」
「え?」
お詫びの食事会の話がいつの間にか小林さんとのお見合い話にすり変わっていて、常務って面白い人だなとくすりとわらってしまう。
明らかに緒方さんに対するいやがらせ。
「常務」
緒方さんが私を背に隠すようにして一歩前に出た。
「今回俺は確かに対応を間違えましたけど、望海は渡しません。お互いの距離も縮まっているんです。邪魔しないで下さい」
「へえ~、ふう~ん」
常務の目が三日月になり、にやにやとしはじめる。
両手を後ろにまわしてひょいっと緒方さんの後ろにいる私の顔を覗き込んできた。
やだ、動き面白っ。
「のんちゃんはそれでいいの?小林くん、いい男だよね」
「常務っ」
緒方さんの焦った声に思わずぷっと吹き出してしまった。
あのクールな緒方さんはどこにいってしまったんだろう。