シークレットの標的(ターゲット)
「どんな人かも知ってる?」
「一般的な情報程度でよければ。まず職業は有名ブランドのデザイナー。プライベートはバツ2、子ども無し、資産家の次男ってことだな」
「他には?」
「昔から女に不自由してなかった。けど、バツが2つついてからはおとなしくなったって聞いてる。俺が知っているのはそんな程度だ。長谷部辰之進が女を騙すヤツかどうかは正直知らない。それは小池さんが自分で判断すべきことだと思う」
「冷たいのね」
望海が恨みがましい目をしてこちらを見る。
「そう言う望海はいつから小池さんの味方になったんだ?」
あんなに迷惑をかけられていたのにと目を細めると、「理解できない言動もあるけど、ちゃんと話すと結構いい子だったのよ」と気まずげに視線をそらした。
向田の彼女の一件以来、望海と小池さんは仕事でペアを組むことも増えて親しく話す間柄になったのだという。
「例えば、俺が望海の好きな俳優の西隼人の知り合いだったとしてーーー」
「知り合いなのっ?ねえ、西隼人と知り合いなのっ?!」
西隼人の名前を出した途端、望海が立ち上がって3人掛けソファーに座る俺の隣に移動してきた。
「ねえ、ホントに知り合い?西さんと?」
こんな時だけにじり寄ってくる望海が憎らしい。
「例えばって言っただろ。例えば、だよ」
「え、なーんだ。そうよね。そんなに都合よく西隼人の知り合いなんて転がってるワケないっか」
ちぇっちえっと明らかにがっかりした様子の望海がソファーから下りて斜め前の1人掛けのソファーに戻っていく。
がっかりしたのはこっちだってーの。なんなんだ、懐かないネコみたいなその態度。
「で、西さんの知り合いだったとして、なに」
「仮に俺が西隼人の知り合いで『西は女癖が悪くておまけに影で女に暴力をふるっている』って言ったらどうする?信じるか?」
「なに、そのあり得ない設定。信じないわよ。そんなどこから出たのかわからないような怪しい話」
「まあ、そうだよな。俺が言いたかったのはさ、長谷部辰之進も業界じゃそれなりに有名人だし、独身で地位も金もあるから噂には事欠かないような存在だ。その中には長谷部のことを本当に知っているヤツも知らないヤツもいるだろう。そんな中から真実の姿を見つけ出すのは不可能に近いだろうな。特にバツが2回もついているような男だぜ。女性関係の噂は何を言われていることやら」
そう言うと、望海は難しい顔をして黙り込んだ。
「俺も最近の長谷部辰之進のことはよく知らない。望海が小池さんの事が心配だっていうもわかるけどね。でも、小池さんはいい加減な噂を聞いても、お互いの会話を通して相手を信頼できるかどうかの判断を自分でした方がいい。決断を他人に委ねると後悔することになるし助言をした相手との関係も微妙なものになる」
「そりゃそうだろうけど」
「長谷部が小池さんと遊びで付き合ってるかどうかは俺には判断がつかない。確かに話だけ聞いているとまるでおとぎ話だって疑いたくなる気持ちはよくわかる。だからこそ本人が相手に不安な気持ちを言葉で伝えることが必要だろ」
「それも全部嘘だったら?」
「まあそういうこともあるだろうな。だから結婚詐欺師なんてのがいるんだし」
むうっと望海が渋い顔をした。如何にも不満だという表情に苦笑してしまう。
「だから、小池さんがきちんと本人と話をする必要があるんだ。最終的な判断は小池さんがするが、望海は話だけは聞いてやれ。第三者だから気が付く違和感だとかおかしな状況とか。多少の痛い目を見るのは勉強だと思うが、取り返しのつかない傷を負うのは避けたい」
「一般的な情報程度でよければ。まず職業は有名ブランドのデザイナー。プライベートはバツ2、子ども無し、資産家の次男ってことだな」
「他には?」
「昔から女に不自由してなかった。けど、バツが2つついてからはおとなしくなったって聞いてる。俺が知っているのはそんな程度だ。長谷部辰之進が女を騙すヤツかどうかは正直知らない。それは小池さんが自分で判断すべきことだと思う」
「冷たいのね」
望海が恨みがましい目をしてこちらを見る。
「そう言う望海はいつから小池さんの味方になったんだ?」
あんなに迷惑をかけられていたのにと目を細めると、「理解できない言動もあるけど、ちゃんと話すと結構いい子だったのよ」と気まずげに視線をそらした。
向田の彼女の一件以来、望海と小池さんは仕事でペアを組むことも増えて親しく話す間柄になったのだという。
「例えば、俺が望海の好きな俳優の西隼人の知り合いだったとしてーーー」
「知り合いなのっ?ねえ、西隼人と知り合いなのっ?!」
西隼人の名前を出した途端、望海が立ち上がって3人掛けソファーに座る俺の隣に移動してきた。
「ねえ、ホントに知り合い?西さんと?」
こんな時だけにじり寄ってくる望海が憎らしい。
「例えばって言っただろ。例えば、だよ」
「え、なーんだ。そうよね。そんなに都合よく西隼人の知り合いなんて転がってるワケないっか」
ちぇっちえっと明らかにがっかりした様子の望海がソファーから下りて斜め前の1人掛けのソファーに戻っていく。
がっかりしたのはこっちだってーの。なんなんだ、懐かないネコみたいなその態度。
「で、西さんの知り合いだったとして、なに」
「仮に俺が西隼人の知り合いで『西は女癖が悪くておまけに影で女に暴力をふるっている』って言ったらどうする?信じるか?」
「なに、そのあり得ない設定。信じないわよ。そんなどこから出たのかわからないような怪しい話」
「まあ、そうだよな。俺が言いたかったのはさ、長谷部辰之進も業界じゃそれなりに有名人だし、独身で地位も金もあるから噂には事欠かないような存在だ。その中には長谷部のことを本当に知っているヤツも知らないヤツもいるだろう。そんな中から真実の姿を見つけ出すのは不可能に近いだろうな。特にバツが2回もついているような男だぜ。女性関係の噂は何を言われていることやら」
そう言うと、望海は難しい顔をして黙り込んだ。
「俺も最近の長谷部辰之進のことはよく知らない。望海が小池さんの事が心配だっていうもわかるけどね。でも、小池さんはいい加減な噂を聞いても、お互いの会話を通して相手を信頼できるかどうかの判断を自分でした方がいい。決断を他人に委ねると後悔することになるし助言をした相手との関係も微妙なものになる」
「そりゃそうだろうけど」
「長谷部が小池さんと遊びで付き合ってるかどうかは俺には判断がつかない。確かに話だけ聞いているとまるでおとぎ話だって疑いたくなる気持ちはよくわかる。だからこそ本人が相手に不安な気持ちを言葉で伝えることが必要だろ」
「それも全部嘘だったら?」
「まあそういうこともあるだろうな。だから結婚詐欺師なんてのがいるんだし」
むうっと望海が渋い顔をした。如何にも不満だという表情に苦笑してしまう。
「だから、小池さんがきちんと本人と話をする必要があるんだ。最終的な判断は小池さんがするが、望海は話だけは聞いてやれ。第三者だから気が付く違和感だとかおかしな状況とか。多少の痛い目を見るのは勉強だと思うが、取り返しのつかない傷を負うのは避けたい」