シークレットの標的(ターゲット)
シークレットのターゲット
*****
「ね、今度の週末ここに行ってみたい」
「へえ、そんなところにアンテナショップがあるんだな。いいよ、行こうか。週末じゃなくてもそこなら会社帰りにも行けるんじゃないか」
私がスマホの画面を見せると、緒方さんも興味を引かれたみたいで了承してくれる。
最近の私たちの流行りは都道府県のアンテナショップ巡り。
東京にいながら各地の名産品を買って味わうことが出来る美味しくて楽しいイベントだ。
まあ買ってきてそのまま食べられるものはともかく、調理が必要なものの大半は緒方さんが料理してくれるんだけど・・・。
「こっちは出来たぞ」
「こっちはもう少し。オーブンのタイマーはあと5分だから、それわたしが運ぶね」
「おう、じゃあ俺は酒とグラスだな」
スパイ事件が解決してすっかり日常が戻ってきた。
緒方さんに誘われることにも慣れ、
いつの間にか一緒に夕食を作って食べる関係になり、
頻繁に緒方さんのお部屋にお邪魔して、
飲み過ぎた日には泊めてもらうことも。
もちろん、そっちの関係はない。
わたしは緒方さんの寝室を借りて鍵を閉めて寝るし、緒方さんはリビングだ。
一時期は二人でいるところになぜか常務が現れるという偶然が続いて驚いてばかりだったけれど、そんな偶然も最近はなくなり楽しくやらせてもらっている。
緒方さんはぐいぐいと迫ってくることがなく、友達以上恋人未満みたいな関係でこんなんでいいのかなと思わないでもない。
初めの頃はぐいぐい来てたけど?
「望海はもう座っていいぞ。オーブンから出すのは熱いから俺がやるし」
「うん、ありがと」
優しいんだよね。
会社ではいつもクールだし、群がってくる女子社員には塩対応なんだけど。
それって、わたしだけ特別だって思っていいのかな。
腕まくりをしてオーブンから耐熱皿を取り出す緒方さんをじーっと見つめていると視線が合った。
「なに、どうした。やっといい男だと気が付いたとか?」
ふっとからかうように笑みを浮かべる緒方さんに
「そうみたい」
と微笑み返した。
「そうか」
緒方さんはさっきよりも笑みを深くして、できたての料理をテーブルに置き向かい側に座った。
「ほら、熱いうちに食べようぜ。乾杯」
せかすようにアルコールの入ったグラスを持ち上げてわたしの顔を見るから急いでグラスを軽く合わせた。
「乾杯、それといただきます」
冷えたワインが喉に流れていく。
うん、おいしい。
でも、でも、ものたりない。
さっき緒方さんのこといい男だって肯定したのに。
今まで緒方さんに好意的な発言をしてこなかった私が初めて言ったのに感想もなければ反応も無しか~。
なんか、がっかり。
ううん、むしろ今まで何も言わなかったわたしに呆れてるんじゃ・・・。
そうだよね、シークレットさんだなんて言われるくらい重要な仕事して忙しくしてるのにお休みの日プラス平日も私に付きあって世話してくれてーーーまさかまだ償いのつもりで一緒にいるだけって可能性とか私の本性を知って恋愛関係にならなくてもいいとか思っちゃったとか。
まさかー。
イヤな予感がビシビシする。
うん、だってこの距離感、友達だよ。恋愛のそれじゃない。
今までだらだらと返事もせずに付き合わせてて緒方さんに飽きられたのだとしたら、私の自業自得じゃん・・・。
えー、そんなのってあり?
もう緒方さんと一緒に過ごすのが私の中で当たり前になってるし、距離を縮めたいとか思っているんだけど。
「ね、今度の週末ここに行ってみたい」
「へえ、そんなところにアンテナショップがあるんだな。いいよ、行こうか。週末じゃなくてもそこなら会社帰りにも行けるんじゃないか」
私がスマホの画面を見せると、緒方さんも興味を引かれたみたいで了承してくれる。
最近の私たちの流行りは都道府県のアンテナショップ巡り。
東京にいながら各地の名産品を買って味わうことが出来る美味しくて楽しいイベントだ。
まあ買ってきてそのまま食べられるものはともかく、調理が必要なものの大半は緒方さんが料理してくれるんだけど・・・。
「こっちは出来たぞ」
「こっちはもう少し。オーブンのタイマーはあと5分だから、それわたしが運ぶね」
「おう、じゃあ俺は酒とグラスだな」
スパイ事件が解決してすっかり日常が戻ってきた。
緒方さんに誘われることにも慣れ、
いつの間にか一緒に夕食を作って食べる関係になり、
頻繁に緒方さんのお部屋にお邪魔して、
飲み過ぎた日には泊めてもらうことも。
もちろん、そっちの関係はない。
わたしは緒方さんの寝室を借りて鍵を閉めて寝るし、緒方さんはリビングだ。
一時期は二人でいるところになぜか常務が現れるという偶然が続いて驚いてばかりだったけれど、そんな偶然も最近はなくなり楽しくやらせてもらっている。
緒方さんはぐいぐいと迫ってくることがなく、友達以上恋人未満みたいな関係でこんなんでいいのかなと思わないでもない。
初めの頃はぐいぐい来てたけど?
「望海はもう座っていいぞ。オーブンから出すのは熱いから俺がやるし」
「うん、ありがと」
優しいんだよね。
会社ではいつもクールだし、群がってくる女子社員には塩対応なんだけど。
それって、わたしだけ特別だって思っていいのかな。
腕まくりをしてオーブンから耐熱皿を取り出す緒方さんをじーっと見つめていると視線が合った。
「なに、どうした。やっといい男だと気が付いたとか?」
ふっとからかうように笑みを浮かべる緒方さんに
「そうみたい」
と微笑み返した。
「そうか」
緒方さんはさっきよりも笑みを深くして、できたての料理をテーブルに置き向かい側に座った。
「ほら、熱いうちに食べようぜ。乾杯」
せかすようにアルコールの入ったグラスを持ち上げてわたしの顔を見るから急いでグラスを軽く合わせた。
「乾杯、それといただきます」
冷えたワインが喉に流れていく。
うん、おいしい。
でも、でも、ものたりない。
さっき緒方さんのこといい男だって肯定したのに。
今まで緒方さんに好意的な発言をしてこなかった私が初めて言ったのに感想もなければ反応も無しか~。
なんか、がっかり。
ううん、むしろ今まで何も言わなかったわたしに呆れてるんじゃ・・・。
そうだよね、シークレットさんだなんて言われるくらい重要な仕事して忙しくしてるのにお休みの日プラス平日も私に付きあって世話してくれてーーーまさかまだ償いのつもりで一緒にいるだけって可能性とか私の本性を知って恋愛関係にならなくてもいいとか思っちゃったとか。
まさかー。
イヤな予感がビシビシする。
うん、だってこの距離感、友達だよ。恋愛のそれじゃない。
今までだらだらと返事もせずに付き合わせてて緒方さんに飽きられたのだとしたら、私の自業自得じゃん・・・。
えー、そんなのってあり?
もう緒方さんと一緒に過ごすのが私の中で当たり前になってるし、距離を縮めたいとか思っているんだけど。