シークレットの標的(ターゲット)
同窓会からの
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同窓会の日がやってきた。

わたしの地元は都心からかなり離れたところにある。
でも、同窓会の会場はギリギリ区内のホテルで行われた。
おそらく卒業後、地元を離れ区内で働いている人が多いせいなんだろうと思う。
地元の民にも遠からず、区内各地に散った民にも遠からずって場所だ。


同窓会の会場に入ると知った顔がちらほらと見えてほっとする。

「のんちゃん久しぶりー、元気だった?」
「なっちゃん、久しぶり」

掛けられた声に振り向くと、同じクラスだったなっちゃんがいて、私たちは両手を取り合って再会を喜んだ。

「あっちに森山君が来てるよ。既に女子に囲まれちゃって近づけないけどね」

なっちゃんが差した方を見ると、ちょっとした人だかりができていた。
真ん中にいるのはもちろん森山君だろう。

「ちょっと前に偶然森山君に出会ったんだけど、ずいぶんと大人格好良くなってたもんねえ。元々格好良かったけどさ、今日も大人気になるのも当然って感じ」

「えー、のんちゃん、最近森山君に会ったの?いいなあ。どこで、どこで?」

「会社の近くのバーだよ。ホントに偶然」

なっちゃんは「羨ましい」を繰り返して「私も都心で仕事を探せばよかったな」と肩を落とした。

なっちゃんは高校卒業後、地方の国立大学に進学して就職は地元に戻っていた。同じ東京都と言っても都心と田舎じゃ天と地ほどの差がある。

「なっちゃんも森山君ファンだっけ?」
「ううん、ただ格好良くなったなって思っただけだけど。都会の男の象徴って感じで憧れるよね。リアルだし」

そう言って両手を胸の前で組んで夢見るような仕草をした。
確かに芸能人より身近な知り合いの方がちょっとリアルでドキドキする。

「でも、わたし来年結婚することになったから浮気してる場合じゃないのよね」
素早く現実に切り替えると、左手の薬指に輝くリングを見せてくれた。

「おおおおー、婚約指輪だ」
「うふふふ。彼が同窓会につけていって欲しいって。とっても心配性なのよ」
「はいはい、ごちそうさま。こっちは婚約者どころか彼もいないんだからあんまりのろけないで頂戴ね」

「はい、はい」
なっちゃんは笑って「じゃあ先生のとこに挨拶に行こっか」とわたしを誘った。



高校を卒業して10年。
みんな揃って28歳になった。
みんな同時に卒業したのに、そこからの人生はみんなバラバラ。

結婚した人も結構いたし、子どもがいるって人も。
遠方や海外にいるから欠席という人もいたけれど、かなりの人数が集まっていた。

久しぶりに会う同級生と話していると同窓会はあっという間だった。

「なっちゃん二次会どうする?」

二次会はホテルに直結した商業施設内の店舗に移動するらしい。

「わたしはパス。彼が迎えに来るから」

「心配性の婚約者だっけ」

「そうなのよね」困ったと言いながらなっちゃんは幸せそうに笑う。

「なっちゃんが行かないなら私もパスしようかな。ここからだとうちまでの帰り道はそこそこ時間がかかるし」
わたしは腕時計を見て帰り道にかかる時間を考えた。

「だったらこっちの二次会に行かないか」

突然掛けられた声に驚いて振り向くとそこには森山君がいた。




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