シークレットの標的(ターゲット)
ソファーの背もたれにもたれてぼーっとしていると、スーツを脱いだ緒方さんが出てきた。
「大丈夫か」
「はい、迷惑をおかけして申し訳ありません。だいぶ楽になりましたからもう少しだけ休ませていただければ帰れます」
「ああ、うん。無理に早く動かなくていいから。明日は休みだろ。落ち着くまで居ればいい」
「・・・ありがとうございます」
落ち着くまでと言ってもそんなに長居をするわけにもいかない。
「・・・」
「・・・」
気まずい・・・。
やっぱりそろそろ帰ろうか、腰を浮かせようと思ったところでーー
「さっきは悪かったな。俺の言い方は君に失礼だった」
「え」
思いがけない謝罪に緒方さんの顔を見つめてしまった。
「だから、森山を食うとか持ち帰るとかーー」
ええ、ええ、わかってます。もちろん。
「誤解だとわかっていただけたらいいんです。私にそんなつもりはなかったので」
「本当に?微塵も思ってなかった?森山はいい男だろ」
はあ?
「思ってませんよ。あなた、いま謝った口で何を言ってるんですか」
このひと、私にけんかを売っているんだろうか。
舌の根の乾かぬうちに何を言ってくれてるんだ。
緒方さんの失礼な言葉に酔って迷惑掛けたのも忘れて憤慨してしまう。
「緒方さんは小池さんに言い寄られているのかもしれませんけど、私は森山君に対して小池さんと同じようなことをするつもりはありませんから」
「そうなのか?森山とまだ話したいとかしつこく言っていたし一緒のタクシーに乗って帰ろうとしてたから、つい」
つい、じゃない!失礼な。
「住んでるところが同じ方向だったし、森山君が私の実家のことを何か知っているみたいだったからそれを聞きたかっただけです。あなたみたいに性欲がどうのって話じゃありませんから」
さっきのお店で森山君が言ってたのだ。
「そういえば、大島さんの実家のお店の名前が変わるらしいね」って。
ここ数年、ろくに連絡もしていない私には寝耳に水の話で。スマホでネット検索をしてみたけれど、そんなローカルな話はどこにも出ていなくて森山君に詳しく聞きたかっただけだ。
「ふうん、俺が性欲の塊だって言いたいのか?」
緒方さんの雰囲気がガラッと変わった。
目は少し細くなり口元に笑みを浮かべ、まるでおもちゃを見つけたライオンや狼みたいだ。
「そうは言ってませんけど」
プイッと横を向くと、私の座るソファーの座面が軽く沈み込んだと思ったら膝が触れ合いそうなほどすぐ隣に緒方さんが移動してきた。
「なーー」
動揺する私をよそに緒方さんがその整った顔にフェロモンを乗せてにやりと笑った。
ひいっ。色気、色気が半端ないんですけどっ。
「俺が性欲の塊だとしたらーーー君は相手をしてくれるのか?」
相手?!
相手って、そっちのあの相手だよね。
この怖そうなイケメンと私が?
「む、無理ですー!!むりっ、無理っ。ごめんなさいー」
即座に降参。
速攻、瞬時、moment!
両手で顔を覆って身体を折り曲げた。
全身が発火したように熱くなり、燃えてるみたい。
「大丈夫か」
「はい、迷惑をおかけして申し訳ありません。だいぶ楽になりましたからもう少しだけ休ませていただければ帰れます」
「ああ、うん。無理に早く動かなくていいから。明日は休みだろ。落ち着くまで居ればいい」
「・・・ありがとうございます」
落ち着くまでと言ってもそんなに長居をするわけにもいかない。
「・・・」
「・・・」
気まずい・・・。
やっぱりそろそろ帰ろうか、腰を浮かせようと思ったところでーー
「さっきは悪かったな。俺の言い方は君に失礼だった」
「え」
思いがけない謝罪に緒方さんの顔を見つめてしまった。
「だから、森山を食うとか持ち帰るとかーー」
ええ、ええ、わかってます。もちろん。
「誤解だとわかっていただけたらいいんです。私にそんなつもりはなかったので」
「本当に?微塵も思ってなかった?森山はいい男だろ」
はあ?
「思ってませんよ。あなた、いま謝った口で何を言ってるんですか」
このひと、私にけんかを売っているんだろうか。
舌の根の乾かぬうちに何を言ってくれてるんだ。
緒方さんの失礼な言葉に酔って迷惑掛けたのも忘れて憤慨してしまう。
「緒方さんは小池さんに言い寄られているのかもしれませんけど、私は森山君に対して小池さんと同じようなことをするつもりはありませんから」
「そうなのか?森山とまだ話したいとかしつこく言っていたし一緒のタクシーに乗って帰ろうとしてたから、つい」
つい、じゃない!失礼な。
「住んでるところが同じ方向だったし、森山君が私の実家のことを何か知っているみたいだったからそれを聞きたかっただけです。あなたみたいに性欲がどうのって話じゃありませんから」
さっきのお店で森山君が言ってたのだ。
「そういえば、大島さんの実家のお店の名前が変わるらしいね」って。
ここ数年、ろくに連絡もしていない私には寝耳に水の話で。スマホでネット検索をしてみたけれど、そんなローカルな話はどこにも出ていなくて森山君に詳しく聞きたかっただけだ。
「ふうん、俺が性欲の塊だって言いたいのか?」
緒方さんの雰囲気がガラッと変わった。
目は少し細くなり口元に笑みを浮かべ、まるでおもちゃを見つけたライオンや狼みたいだ。
「そうは言ってませんけど」
プイッと横を向くと、私の座るソファーの座面が軽く沈み込んだと思ったら膝が触れ合いそうなほどすぐ隣に緒方さんが移動してきた。
「なーー」
動揺する私をよそに緒方さんがその整った顔にフェロモンを乗せてにやりと笑った。
ひいっ。色気、色気が半端ないんですけどっ。
「俺が性欲の塊だとしたらーーー君は相手をしてくれるのか?」
相手?!
相手って、そっちのあの相手だよね。
この怖そうなイケメンと私が?
「む、無理ですー!!むりっ、無理っ。ごめんなさいー」
即座に降参。
速攻、瞬時、moment!
両手で顔を覆って身体を折り曲げた。
全身が発火したように熱くなり、燃えてるみたい。