シークレットの標的(ターゲット)
やばい、したことのない目眩がする・・・。
想定外の緒方発言にクラクラしていると、
「今のなんですかっ」
「どういう意味ですか?!」
と女子たちが騒ぎ出した。
当の本人は薄ら笑顔を浮かべるだけでぴたりと口を閉じている。
「いま、呼び捨てにしましたよねっ」
「どういう関係ですか」
ほら、女の子たちの目が三角になってる。
どうしてくれるのよ、と緒方さんを睨んでやる。
「何なの、ずいぶんにぎやかだけど」
「いま、体調不良者はいないけれど、一応ここでは静かにしてくれないと困るわ」
騒ぎを聞きつけ診察室から草刈先生と松平主任が出てきてしまった。
「ああ、申し訳ありません。彼女たちに夕食に誘われたんですけど、僕の彼女はやきもち焼きなんでと断っていたんですよ。つい先日もキスマークつけられちゃって」
何でもないことのようにさらりとまたキスマークの話をする緒方さんに草刈先生と主任が笑った。
このキスマークの話、しつこい。
「ああ、あったわね、キスマーク。鎖骨のすぐ下に」
草刈先生がそう言って女性社員がえええっと引いている。
「うそですよね。彼女がいるなんて聞いたことないし」
女子社員の一人が緒方さんに近づくと緒方さんが軽く眉間にシワを寄せ身体を引く。
「診察の時に確認したわよ。肩のところにも印があったから相当情熱的な女性みたいね」
草刈先生がさらに余分なことを言った。
やばい、キスマークはともかくとして、肩の印ってもしかして、私の歯形なんじゃーーー。
キスマークをつけた記憶はないけれど、彼の肩にかみついた記憶はある。ありすぎる。
なんなら噛んだ感触まで残ってる。
だらだらと心の中で冷や汗をかきながら息を止め、緒方さんと女性社員、草刈先生と主任たちから必死で気配を消してみる。
空気、空気になるんだ。私は空気、空気、空気。
「緒方さんって本当に彼女がいるんだ…」
女性社員の呟きに
「だから申し訳ないけどお誘いには応じられないんだ。ごめんね」
緒方さんが軽い返事を返していた。
「じゃ、健診終わったし俺は先にオフィスに戻るから」
そう言ってこちらに背を向け出て行こうとする。
いや、待て。
まさか、この匂わせをそのままにして一人で逃げるつもりなのか。
真っ青のなっていると緒方さんは歩き始めてすぐにこちらを振り返った。
「望海、いや職場じゃ大島さんだったな。大島さんも飲み過ぎんなよ」
ニヤリと黒い笑顔を残してフロアを出て行った。
ひいいいい
あんた、今なんでまた私の下の名前をっ!
今の発言のせいで目の前の女性たちが殺気だっている。
「ちょっと、今のどういうこと」
「緒方さんとどういう関係なの」
「あなた、まさか緒方さんの…」
顔色を変えた女性社員が私に迫ってくる。
違いますっ。違いますからっ。
両手をブンブンと左右に振って「知りません」と否定する。
「だったらどうして名字で呼ばずに名前を呼び捨てされてるのよ」
「私にもわかりませんっ。な、名前は今はじめて呼ばれましたし、意味がわかりません」
何てことしてくれたんだ、緒方凌雅。
わたしの前には私を睨む海事の女性たちプラスいつの間にか受付に来ていた小池さん。
「あっ。大島さんったらやっぱり朝も一緒に出勤してたんですね。私にはたまたま出会ったみたいに言ってたけど。まんまと騙されました」
ショックを受けたみたいな顔をする小池さんにこっちがショックを受けた。
どうしてこんなタイミングでそういう事を言うかな、この子は。
「騙してないし。本当に駅を出たらたまたま出会ったの!」
噓じゃない。
想定外の緒方発言にクラクラしていると、
「今のなんですかっ」
「どういう意味ですか?!」
と女子たちが騒ぎ出した。
当の本人は薄ら笑顔を浮かべるだけでぴたりと口を閉じている。
「いま、呼び捨てにしましたよねっ」
「どういう関係ですか」
ほら、女の子たちの目が三角になってる。
どうしてくれるのよ、と緒方さんを睨んでやる。
「何なの、ずいぶんにぎやかだけど」
「いま、体調不良者はいないけれど、一応ここでは静かにしてくれないと困るわ」
騒ぎを聞きつけ診察室から草刈先生と松平主任が出てきてしまった。
「ああ、申し訳ありません。彼女たちに夕食に誘われたんですけど、僕の彼女はやきもち焼きなんでと断っていたんですよ。つい先日もキスマークつけられちゃって」
何でもないことのようにさらりとまたキスマークの話をする緒方さんに草刈先生と主任が笑った。
このキスマークの話、しつこい。
「ああ、あったわね、キスマーク。鎖骨のすぐ下に」
草刈先生がそう言って女性社員がえええっと引いている。
「うそですよね。彼女がいるなんて聞いたことないし」
女子社員の一人が緒方さんに近づくと緒方さんが軽く眉間にシワを寄せ身体を引く。
「診察の時に確認したわよ。肩のところにも印があったから相当情熱的な女性みたいね」
草刈先生がさらに余分なことを言った。
やばい、キスマークはともかくとして、肩の印ってもしかして、私の歯形なんじゃーーー。
キスマークをつけた記憶はないけれど、彼の肩にかみついた記憶はある。ありすぎる。
なんなら噛んだ感触まで残ってる。
だらだらと心の中で冷や汗をかきながら息を止め、緒方さんと女性社員、草刈先生と主任たちから必死で気配を消してみる。
空気、空気になるんだ。私は空気、空気、空気。
「緒方さんって本当に彼女がいるんだ…」
女性社員の呟きに
「だから申し訳ないけどお誘いには応じられないんだ。ごめんね」
緒方さんが軽い返事を返していた。
「じゃ、健診終わったし俺は先にオフィスに戻るから」
そう言ってこちらに背を向け出て行こうとする。
いや、待て。
まさか、この匂わせをそのままにして一人で逃げるつもりなのか。
真っ青のなっていると緒方さんは歩き始めてすぐにこちらを振り返った。
「望海、いや職場じゃ大島さんだったな。大島さんも飲み過ぎんなよ」
ニヤリと黒い笑顔を残してフロアを出て行った。
ひいいいい
あんた、今なんでまた私の下の名前をっ!
今の発言のせいで目の前の女性たちが殺気だっている。
「ちょっと、今のどういうこと」
「緒方さんとどういう関係なの」
「あなた、まさか緒方さんの…」
顔色を変えた女性社員が私に迫ってくる。
違いますっ。違いますからっ。
両手をブンブンと左右に振って「知りません」と否定する。
「だったらどうして名字で呼ばずに名前を呼び捨てされてるのよ」
「私にもわかりませんっ。な、名前は今はじめて呼ばれましたし、意味がわかりません」
何てことしてくれたんだ、緒方凌雅。
わたしの前には私を睨む海事の女性たちプラスいつの間にか受付に来ていた小池さん。
「あっ。大島さんったらやっぱり朝も一緒に出勤してたんですね。私にはたまたま出会ったみたいに言ってたけど。まんまと騙されました」
ショックを受けたみたいな顔をする小池さんにこっちがショックを受けた。
どうしてこんなタイミングでそういう事を言うかな、この子は。
「騙してないし。本当に駅を出たらたまたま出会ったの!」
噓じゃない。