シークレットの標的(ターゲット)
「主任、ちょっと失礼しますね」
失礼ながら主任のお顔に手を伸ばし、眼鏡を取り上げきつく縛ってある髪を解いてささっと手でほぐしてやるとーーー
「おおお」
マジか。
現れたのは、アジアンビューティー。
わざともっさりした印象に描かれた眉毛。ノーメイク風アイメイク。勿論マスカラなど使われてはいないが、素材が、素材が、素材がいいのは一目瞭然、明明白白。
このもっさりメイクを落として一からやりなおさせて欲しい。
「なんでこんないいもの隠し持ってるんですか・・・」
驚きに目を丸くしていると、松平主任が困った顔をする。
「なんでって、旦那さんが心配するからよ、ねえ」
主任の代わりに返事をしたのは草刈先生だった。
「草刈先生はご存知だったんですね」
「そうよ。松平主任のご主人のこともね。旦那さんったら心配性で。こんな美人の奥さんを病院じゃなく男性がたくさんいる企業で働かせるのが心配で地味メイクを強要してるの。すごいでしょ。それを素直に従う主任の愛にも感心するけど」
はあ。
何というか。
それはそれは。
「ちなみに、何年前からそのメイクを?」
「かれこれ10年になるかしら」
10年も?!
「もったいない・・・」
こんなに綺麗なのに隠しておくなんて。
「見せびらかして歩けばいいのに」と呟くと
「夫婦で出かけるときは見せびらかしてるんじゃないかしら」
と草刈先生が反応し松平主任が「別に見せびらかしてるワケじゃないですから」と手を振って否定する。
「周りもやめなさいって言ったんだけどダメなの。ご主人が妻を見せびらかしたい気持ちはあるけれど、それ以上に妻に悪い虫がつくのが心配なんだ、って言ってね。心配性が過ぎてもう病的」
草刈先生が痛烈な言葉を吐いた。
松平主任の旦那さんは主任の3つ年上。
だから40才くらいってこと。
アクロスコーポレーションの社員ではない。
芸術関係のお仕事をしているらしいけれど、なぜか具体的な職種は教えてもらえなかった。売れない画家とかなんだろうか。
草刈先生に教えてもらっても松平主任の旦那さんのイメージがうまく浮かんで来ない。
失礼ながら主任のお顔に手を伸ばし、眼鏡を取り上げきつく縛ってある髪を解いてささっと手でほぐしてやるとーーー
「おおお」
マジか。
現れたのは、アジアンビューティー。
わざともっさりした印象に描かれた眉毛。ノーメイク風アイメイク。勿論マスカラなど使われてはいないが、素材が、素材が、素材がいいのは一目瞭然、明明白白。
このもっさりメイクを落として一からやりなおさせて欲しい。
「なんでこんないいもの隠し持ってるんですか・・・」
驚きに目を丸くしていると、松平主任が困った顔をする。
「なんでって、旦那さんが心配するからよ、ねえ」
主任の代わりに返事をしたのは草刈先生だった。
「草刈先生はご存知だったんですね」
「そうよ。松平主任のご主人のこともね。旦那さんったら心配性で。こんな美人の奥さんを病院じゃなく男性がたくさんいる企業で働かせるのが心配で地味メイクを強要してるの。すごいでしょ。それを素直に従う主任の愛にも感心するけど」
はあ。
何というか。
それはそれは。
「ちなみに、何年前からそのメイクを?」
「かれこれ10年になるかしら」
10年も?!
「もったいない・・・」
こんなに綺麗なのに隠しておくなんて。
「見せびらかして歩けばいいのに」と呟くと
「夫婦で出かけるときは見せびらかしてるんじゃないかしら」
と草刈先生が反応し松平主任が「別に見せびらかしてるワケじゃないですから」と手を振って否定する。
「周りもやめなさいって言ったんだけどダメなの。ご主人が妻を見せびらかしたい気持ちはあるけれど、それ以上に妻に悪い虫がつくのが心配なんだ、って言ってね。心配性が過ぎてもう病的」
草刈先生が痛烈な言葉を吐いた。
松平主任の旦那さんは主任の3つ年上。
だから40才くらいってこと。
アクロスコーポレーションの社員ではない。
芸術関係のお仕事をしているらしいけれど、なぜか具体的な職種は教えてもらえなかった。売れない画家とかなんだろうか。
草刈先生に教えてもらっても松平主任の旦那さんのイメージがうまく浮かんで来ない。