シークレットの標的(ターゲット)
「お待たせしました。主任代理の大島と申します」
カウンターの向こう側に立つ男性に声をかけると
「海外事業部、緒方です。今朝の件で話がしたいのですが」
緒方さんの表情は固い。
ちょっとお怒りどころか結構お怒り。
あれ、でもこの人どこかで見たことあるかも・・・。
「ああ、できればその彼女抜きで話をさせてもらってもいいですか」
背後にいる小池さんを目で示す。
その様子に小池さんは思わずという感じで不満げに口を尖らせたもののすぐにそれを隠すようにうつむいた。
まさか小池さん、何か海事のオフィスで失礼な態度を取ったんじゃと嫌な予感がする。
小池さんにはデスクに戻るように目で示して
「では、こちらへどうぞ」と緒方さんを手近な健康相談室に案内した。
室内に入ると男性はすぐにこちらを振り返り、どう見ても不機嫌な様子で口を開く。
「あの子、何なんだ。俺の留守中にいきなり職場に来てぺちゃくちゃと俺の個人情報話していったってアシスタントが教えてくれた。ここの個人情報の管理どうなってんの」
こちらは真っ青になった。
「も、申し訳ございません!」
よりにもよって個人情報を喋っていたと。
なんてことしてくれたんだ、小池さん。
「わざと健康診断に行ってなかったわけじゃない。ここ数年、4ヶ月間開発途上国に行き2週間ほど国内に戻りまた海外ってペースだったから会社の規定の健診を受けられていなかっただけで、合間に受診して受けた採血結果は出していた。産業医だってお宅の主任だって状況は知っていたはずなんだが」
そうだったんだ。
ああ、本当に余分なことをーーー
「本当に申し訳ありません。情報共有がされていなかったことと私たちの指導が行き届いておらず大変ご迷惑をおかけしました」
こちらはひたすら謝るしかない。
松平主任に敵対心を燃やす小池さんが何か弱みを握ろうとして主任の留守中に色々なファイルをあさった挙げ句こんなことになったのだと思う。
今朝、もう少し彼女の言動に注意していたら少なくともこの緒方さんのところに行くことは止められたはずだ。
「とりあえず彼女のこと、きちんと上司に報告しておいてくれよ。それと、指導の徹底」
緒方さんの冷たい視線に身がすくむ。
「はい、それはもう、もちろんです。本当に申し訳ございませんでした」
きっちりと頭を下げて謝罪すると、緒方さんがふうっと息を吐いた。
「ーーー俺の気のせいじゃないと思うけど、おそらく・・・彼女俺に気があって暴走したのかもしれない」
いきなり変わった声色に下げていた頭を上げて緒方さんの顔を見ると、それまでの怒りの表情からは若干トーンダウンしたかも。
カウンターの向こう側に立つ男性に声をかけると
「海外事業部、緒方です。今朝の件で話がしたいのですが」
緒方さんの表情は固い。
ちょっとお怒りどころか結構お怒り。
あれ、でもこの人どこかで見たことあるかも・・・。
「ああ、できればその彼女抜きで話をさせてもらってもいいですか」
背後にいる小池さんを目で示す。
その様子に小池さんは思わずという感じで不満げに口を尖らせたもののすぐにそれを隠すようにうつむいた。
まさか小池さん、何か海事のオフィスで失礼な態度を取ったんじゃと嫌な予感がする。
小池さんにはデスクに戻るように目で示して
「では、こちらへどうぞ」と緒方さんを手近な健康相談室に案内した。
室内に入ると男性はすぐにこちらを振り返り、どう見ても不機嫌な様子で口を開く。
「あの子、何なんだ。俺の留守中にいきなり職場に来てぺちゃくちゃと俺の個人情報話していったってアシスタントが教えてくれた。ここの個人情報の管理どうなってんの」
こちらは真っ青になった。
「も、申し訳ございません!」
よりにもよって個人情報を喋っていたと。
なんてことしてくれたんだ、小池さん。
「わざと健康診断に行ってなかったわけじゃない。ここ数年、4ヶ月間開発途上国に行き2週間ほど国内に戻りまた海外ってペースだったから会社の規定の健診を受けられていなかっただけで、合間に受診して受けた採血結果は出していた。産業医だってお宅の主任だって状況は知っていたはずなんだが」
そうだったんだ。
ああ、本当に余分なことをーーー
「本当に申し訳ありません。情報共有がされていなかったことと私たちの指導が行き届いておらず大変ご迷惑をおかけしました」
こちらはひたすら謝るしかない。
松平主任に敵対心を燃やす小池さんが何か弱みを握ろうとして主任の留守中に色々なファイルをあさった挙げ句こんなことになったのだと思う。
今朝、もう少し彼女の言動に注意していたら少なくともこの緒方さんのところに行くことは止められたはずだ。
「とりあえず彼女のこと、きちんと上司に報告しておいてくれよ。それと、指導の徹底」
緒方さんの冷たい視線に身がすくむ。
「はい、それはもう、もちろんです。本当に申し訳ございませんでした」
きっちりと頭を下げて謝罪すると、緒方さんがふうっと息を吐いた。
「ーーー俺の気のせいじゃないと思うけど、おそらく・・・彼女俺に気があって暴走したのかもしれない」
いきなり変わった声色に下げていた頭を上げて緒方さんの顔を見ると、それまでの怒りの表情からは若干トーンダウンしたかも。