シークレットの標的(ターゲット)
「それより緒方君と大島さんの噂が広まってて大変そうね」
松平主任が気の毒そうな目をこちらに向けてきた。
「私も昨日専務に聞かれたわよ。二人は婚約したのかって」
草刈先生の言葉にぎょっとする。
緒方さんは専務が気にするほどこの会社で将来を嘱望されている存在なのだろうか。
確かにシークレットさんと呼ばれるくらい彼の仕事は謎に包まれている。それだけ重要な仕事を任されているのかもしれないってことは想像に難くない。
「もちろん、婚約してないって言ってくださったんですよね?」
確認、一応確認。
「うん。婚約したとは聞いてないって言っておいたわ」
婚約したとは聞いてない・・・。
それは自分は聞いていないけれど婚約しているかもしれないってニュアンスが含まれていて、交際自体は肯定したってことですね。
私としてはできれば交際自体を否定して欲しかったところだけど、ここ最近の状況を考えたら仕方ないか。
それにしてもそんな上層部にまで噂が広がっているとはーー
タヌキ常務に見られた時点でもうアウトだったのだろう。
がっくりと肩を落とした。
「そういえば最近変わったことはない?」
松平主任と草刈先生が揃って私を見つめる。
「変わったことですか?ーーー緒方さんにつきまとわれたこと以外は思い当ることはないですけど」
もうやけっぱちだ。
ぷっと草刈先生が吹き出し、松平主任は小さく笑った。
「まあ何もなければいいんだけど。困ったことがあったら声を掛けてね」
松平主任の一言に違和感を感じる。
「そういえば、緒方さんも同じようなことを言っていたんですけど、何か気になる事でもあるんですか」
そう言うと松平主任の目がちょっと泳いだ。
「緒方君は人気者だから、彼女になった人に嫌がらせとかあるんじゃないかって気にしてるのよ」
草刈先生が心配そうに私の様子を窺う。
・・・何だか非常に2人の様子が怪しいけれど、どうやら私の妊娠の心配をしているなどという話ではなさそうだ。
「確かにひそひそ言われたり知らない女子社員に睨まれたりしてますけど、いまのところ実害はありません」
「あー、うん、女子社員もそうなんだけど、知らないひとから声掛けられたりとかは?」
いよいよ怪しい。いったい私はなんの心配をされているのか。
知らないひとから声を掛けられるとか。
女子社員からの嫌がらせという枠を超えているのでは。
「ーーーどうにも不自然なんですけど」
私は主任と草刈先生の顔を交互に見つめる。
「緒方さんの何かあったら常務のところへ行けって言われたってだけでもおかしいのに主任も草刈先生の態度も変じゃないですか。私何かしでかしました?新しいエコーの医療器械購入に関しての情報なら誰からも何も聞かれてませんし、社外で怪しいひとからの接触もありませんよ」
「・・・あ、うん。それならいいのよ。それなら」
松平主任は申し訳なさそうに視線を下げた。
松平主任が気の毒そうな目をこちらに向けてきた。
「私も昨日専務に聞かれたわよ。二人は婚約したのかって」
草刈先生の言葉にぎょっとする。
緒方さんは専務が気にするほどこの会社で将来を嘱望されている存在なのだろうか。
確かにシークレットさんと呼ばれるくらい彼の仕事は謎に包まれている。それだけ重要な仕事を任されているのかもしれないってことは想像に難くない。
「もちろん、婚約してないって言ってくださったんですよね?」
確認、一応確認。
「うん。婚約したとは聞いてないって言っておいたわ」
婚約したとは聞いてない・・・。
それは自分は聞いていないけれど婚約しているかもしれないってニュアンスが含まれていて、交際自体は肯定したってことですね。
私としてはできれば交際自体を否定して欲しかったところだけど、ここ最近の状況を考えたら仕方ないか。
それにしてもそんな上層部にまで噂が広がっているとはーー
タヌキ常務に見られた時点でもうアウトだったのだろう。
がっくりと肩を落とした。
「そういえば最近変わったことはない?」
松平主任と草刈先生が揃って私を見つめる。
「変わったことですか?ーーー緒方さんにつきまとわれたこと以外は思い当ることはないですけど」
もうやけっぱちだ。
ぷっと草刈先生が吹き出し、松平主任は小さく笑った。
「まあ何もなければいいんだけど。困ったことがあったら声を掛けてね」
松平主任の一言に違和感を感じる。
「そういえば、緒方さんも同じようなことを言っていたんですけど、何か気になる事でもあるんですか」
そう言うと松平主任の目がちょっと泳いだ。
「緒方君は人気者だから、彼女になった人に嫌がらせとかあるんじゃないかって気にしてるのよ」
草刈先生が心配そうに私の様子を窺う。
・・・何だか非常に2人の様子が怪しいけれど、どうやら私の妊娠の心配をしているなどという話ではなさそうだ。
「確かにひそひそ言われたり知らない女子社員に睨まれたりしてますけど、いまのところ実害はありません」
「あー、うん、女子社員もそうなんだけど、知らないひとから声掛けられたりとかは?」
いよいよ怪しい。いったい私はなんの心配をされているのか。
知らないひとから声を掛けられるとか。
女子社員からの嫌がらせという枠を超えているのでは。
「ーーーどうにも不自然なんですけど」
私は主任と草刈先生の顔を交互に見つめる。
「緒方さんの何かあったら常務のところへ行けって言われたってだけでもおかしいのに主任も草刈先生の態度も変じゃないですか。私何かしでかしました?新しいエコーの医療器械購入に関しての情報なら誰からも何も聞かれてませんし、社外で怪しいひとからの接触もありませんよ」
「・・・あ、うん。それならいいのよ。それなら」
松平主任は申し訳なさそうに視線を下げた。