シークレットの標的(ターゲット)
「そういえば、期間限定って言ってたよね。緒方さんの帰国が間に合うかわからないんだけど」

なんと言ってもいつ帰ってくるかわからないような人だ。
だからこそシークレットさんなんだし。

「レストランの営業期間はあと3ヶ月ありますから大丈夫だと思うんですけど、もし帰国しなかったら大島さんが好きに使って下さい。でも緒方さん、今までも半年とか1年の長期出張期間中でも合間に数日は帰国してたみたいですから大丈夫でしょ」

「よ、よく知ってるわね、そんなこと」
「勿論ですよ。私は本気でシークレットの緒方さんを狙ってましたから」

それってストーカーに近いと思うんだけど、さすがというか何というか。

「でも、シークレットさんの仕事ってホントに彼女にもシークレットなんですねぇ」

感心したように小池さんが言った。

まあホントの彼女じゃないしと思いつつ勿論わたしは余分なことは言わない。
作り笑いを浮かべると、
「そういえば」と小池さんは何かを思い出したらしい。

「そういえばなんですけど。
宮本さん、私にしつこくシークレットさんを落として欲しいって言ってたんです。私がパーティーの招待状もらったから乗り換えるって言ったらもう少し頑張った方がいいとかしつこく言ってきて。おかしいなとーーー」

なにか、裏があると思っていいのかな。
この状況を考えると怪しいとしか言いようがない。

「ねえ、宮本さんってホントに彼氏がいたの?」

「ええ、別の会社の2つ上の男性だって聞いてます。多分半同棲状態なんじゃないかな。お相手の勤務先の会社はそこそこに大きいんですけど、彼自身はただの営業職らしいので私は興味なくて。彼のお友達を紹介して欲しいとは言ったことないです」

さすが大物狙いの小池さん。
その辺しっかりと線で分けている。

それにしても宮本さんに半同棲をするようなお相手がいるとは知らなかった。
ということは私につきまとっていたのは緒方さんに恋をしていたからじゃないってこと?

てっきり緒方さんのことが好きなんだとばかり思ってたけどどうやら違うらしい。

2才上ということは私と同じ年。
『向田さん』はやっぱり私の知ってる向田くんの可能性が高い。

彼の名前を知っているか聞いてみたが残念ながら答えはノーだった。

大物じゃない宮本さんの彼にはこれっぽっちの興味もなかったらしい。
ここまではっきりしていると潔さすら感じてしまう。



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