シークレットの標的(ターゲット)
朝のミーティングで宮本さんが病気療養のためしばらくお休みになるということが発表されたーーー
ミーティングが終わって小池さんがやってきた。
「足の具合はどうですか」
「うん、違和感あるけど痛いって程じゃないの。対して腫れてもいないし固定しとけば大丈夫そう。昨日は私の分の仕事もありがとう」
「いえ、それならよかったです。ーーあの、宮本さんのことですけど。昨日の昼に体調悪いから暫く会社休むってメール来て。昨日の朝は大島さんに謝るって言ってたのに、なんかすみません」
小池さんが申し訳なさそうに視線を落とした。
おそらく事情は知らないであろう小池さん。親しい宮本さんと私の間に入った責任感で私に謝ってきているのだろうなと思うと胸が痛む。
会社と宮本さんとの間でどういう話になるのかわからない私としては迂闊なことは言えない。
「捻挫は私の運動神経が悪かっただけだから、小池さんは気にしないで。それより、明後日パーティーでしょ。残業にならないように早く仕事しよっ」
「あ、そうなんです。いよいよって感じで。今日もエステ予約しちゃいました」
ぱっと小池さんの表情が明るくなる。
今日はネイルとフェイスマッサージの予定だそうだ。
セレブな人がたくさん集まるパーティーだなんて庶民のわたしにはどんなものか想像がつかないけれど、小池さんは目を輝かせてどれほど楽しみにしているかと語る。
当日は例の彼が迎えに来てくれるんだそうだ。
楽しそうで何より。
幸せな未来が来るといいね。
そういえば、小池さんからもらったレストランの件、緒方さんに話してなかったなと思いだした。
昨夜はそんな話ができるほどの余裕はなかったし、期限まではまだ間があるから今度でいいか。
小池さんはお二人でって言ってたけど、私は彼と行く気はないし緒方さんだって誰か別の人と行くだろう。