シークレットの標的(ターゲット)
午前中はデスクワークに集中し、お昼はいつものように松平主任と草刈先生と一緒にランチ。今日は朝からいろいろあってお弁当を作ることができなかったからオフィスビル内のコンビニで買ったサンドイッチとサラダだ。
「昨日緒方君帰ってきたんだって?」
開口一番緒方さんの話だった。
「よくご存知ですね」
松平主任ではなく草刈先生から言われたことが驚きだ。
「さっき内線もらったから。あなたの足の状態が気になったみたいよ」
まさか先生に内線かけてきたってこと?
何を考えているんだか。
「あらー愛されてるわね。あなたのことは昨日のうちに自分の目で確認してるでしょうに」
松平主任の言葉にも驚いてしまう。なんで昨日うちに来たって知っているんだろう。
まさか、まさかだけど、シークレットさん関連で会社に見張られてるってことはないよね?
ぞわりとして身体が固まってしまう。
「お、大島さん?どうしたの、そんな変な顔して」
ムンクの絵画のような顔をしていたらしい私の背中を草刈先生がさすってくれる。
「わたしまだ疑われているか狙われているとかしてます?」
念のため聞いておかないと。ただ本当のことを教えてもらえるとは限らないということもわかっている。
「そんな話は聞いてないけど?昨日のうちにキネックス社は吸収されてなくなってるも同然だからあなたの同級生の向田ってヤツももううちに絡んでくることはないし。って緒方君から聞いてないの?」
「ええ。全然」全くです。
しかもキネックス社なくなるんですか?
「じゃあ昨日は大島さんが心配で帰国した足で駆けつけてよろしくやってたってこと?」
よろしく?よろしくってなんだろう。
昨日は世話するしないで言い争って疲れた緒方さんが寝てしまってーーーー。
で、今朝のあれだ。
それで思い出してしまった。
寝起きの緒方さんのイケメン顔と頬擦りを思い出して思わず顔が熱くなる。
「やだ、大島さん顔真っ赤じゃないの。何を思いだしてるの」
「まさか、緒方君ったらけが人相手に盛り上がったんじゃないでしょうね」
先生と主任のダブル攻撃に動揺して更に顔が赤くなる。
盛り上がってない、盛り上がってないからっ。
一緒の布団で寝ただけで、ーーーーだけじゃないか。
寝ぼけた緒方さんにすりすりされた。うん、恥ずかしい。
「あら、ホントにシちゃったの?そんなに真っ赤になって」
ケラケラと松平主任が笑いだし、草刈先生がニヤニヤしながらわたしの顔を覗き込んできた。
「まさか、また歯形付けるような激しい行為に及んでないわよね」
ひいいいいー
やったけどやってませんーーーーーー