シークレットの標的(ターゲット)
「因みに、わかっていると思うけど、友人っていうのももう無理だから。女除けの役は違う方に頼んで頂戴」
ふぐ屋では流されてしまったけれど、もう流されない。
信用できない人と友人とはいえこのまま付き合っていくことはできない。
ましてやこの先も女除けにされるなんて冗談じゃない。
次はシークレットファンから嫌がらせされそうだ。
「言いたいことはよくわかるよ。俺はそう思わせてしまうだけのことをした自覚がある。だけど、言い訳を聞いてくれないか」
緒方さんが強く真っ直ぐな視線を向けてきた。
「業務上秘密にしなければいけないことがあって話せる内容が限られているけれど、どうしても聞いてもらいたい」
「いいわ。どうぞ」
最後だし。
聞いても私の考えは変わらないし。
こうやって話をしないことには私たちは終われない。
お互いおそらくもう友人関係以上の好意を持ってしまっている。
緒方さんの昨夜の態度もそうだし、私だって彼との距離感が心地いいと感じてしまったことがあった。
でも、今日の午後に生理が来たことで私の中の最大の不安を消すことができ、同時に自分が囮だったのだと気が付いてしまった。
今、ここが私たちの転換点だ。
「俺の仕事は海外向けの新しい事業を展開するための情報を集めることなんだ。主に開発途上国向けだな。詳しくは言えないけれど」
緒方さんが両手を組んで膝に乗せ話し始めた。
「森山とは何度か一緒に仕事をした関係で知り合った。年齢も近いし、双方の会社が何度か共同開発することもあって秘密を共有する仲間になり親しくなったんだ。だけど昨年末、秘密裏に進めようとしていたプロジェクトの情報がライバル他社に渡っていたことがわかった。ただその時の犯人はすぐにわかったんだ。プロジェクトに関わっていた森山の女性アシスタントが森山に振られた腹いせで情報を流していた」
「え・・・」
工藤さんから聞いた話では森山君の会社の人がってことだったけど、恋愛が絡んでいたとは。
恋愛が人をダメにするパターンだったということか。
「その女は懲戒処分を受けて地方に異動になった。それで一件落着すると思ったんだが、その後今度は俺の情報も他社に漏れているんじゃないかと噂されるようになった。俺が入国した数日後にライバル他社の人間が同じ地域に現れたことがあってこれは本格的にまずいと思った」
ちょっと首を傾げた私に「俺が行くのは辺境と言われるような場所で同じ地域に日本人が来ることはあり得ないに近い話なんだ」と付け加えてくれた。
なるほど。
同じ時期の同じ場所に日本の企業の人間が現れるなんてことはあり得ないのか。
「それで会社の上層部に報告して、常務が動いてくれることになったんだが、そのうち情報漏洩の裏にキネックス社が絡んでいるかもしれないって話になった」
ああ、そこでキネックス社の名前が出てくるんだ。
でも、キネックス社がどんな企業なのかよくわかっていないけれど。確か海外向けコンテナ事業だったかなって程度の認識しかない。
ふぐ屋では流されてしまったけれど、もう流されない。
信用できない人と友人とはいえこのまま付き合っていくことはできない。
ましてやこの先も女除けにされるなんて冗談じゃない。
次はシークレットファンから嫌がらせされそうだ。
「言いたいことはよくわかるよ。俺はそう思わせてしまうだけのことをした自覚がある。だけど、言い訳を聞いてくれないか」
緒方さんが強く真っ直ぐな視線を向けてきた。
「業務上秘密にしなければいけないことがあって話せる内容が限られているけれど、どうしても聞いてもらいたい」
「いいわ。どうぞ」
最後だし。
聞いても私の考えは変わらないし。
こうやって話をしないことには私たちは終われない。
お互いおそらくもう友人関係以上の好意を持ってしまっている。
緒方さんの昨夜の態度もそうだし、私だって彼との距離感が心地いいと感じてしまったことがあった。
でも、今日の午後に生理が来たことで私の中の最大の不安を消すことができ、同時に自分が囮だったのだと気が付いてしまった。
今、ここが私たちの転換点だ。
「俺の仕事は海外向けの新しい事業を展開するための情報を集めることなんだ。主に開発途上国向けだな。詳しくは言えないけれど」
緒方さんが両手を組んで膝に乗せ話し始めた。
「森山とは何度か一緒に仕事をした関係で知り合った。年齢も近いし、双方の会社が何度か共同開発することもあって秘密を共有する仲間になり親しくなったんだ。だけど昨年末、秘密裏に進めようとしていたプロジェクトの情報がライバル他社に渡っていたことがわかった。ただその時の犯人はすぐにわかったんだ。プロジェクトに関わっていた森山の女性アシスタントが森山に振られた腹いせで情報を流していた」
「え・・・」
工藤さんから聞いた話では森山君の会社の人がってことだったけど、恋愛が絡んでいたとは。
恋愛が人をダメにするパターンだったということか。
「その女は懲戒処分を受けて地方に異動になった。それで一件落着すると思ったんだが、その後今度は俺の情報も他社に漏れているんじゃないかと噂されるようになった。俺が入国した数日後にライバル他社の人間が同じ地域に現れたことがあってこれは本格的にまずいと思った」
ちょっと首を傾げた私に「俺が行くのは辺境と言われるような場所で同じ地域に日本人が来ることはあり得ないに近い話なんだ」と付け加えてくれた。
なるほど。
同じ時期の同じ場所に日本の企業の人間が現れるなんてことはあり得ないのか。
「それで会社の上層部に報告して、常務が動いてくれることになったんだが、そのうち情報漏洩の裏にキネックス社が絡んでいるかもしれないって話になった」
ああ、そこでキネックス社の名前が出てくるんだ。
でも、キネックス社がどんな企業なのかよくわかっていないけれど。確か海外向けコンテナ事業だったかなって程度の認識しかない。