シークレットの標的(ターゲット)
「言っとくけど、望海の視線と思考回路がわかりやすすぎるだけだからな」
緒方さんは眉を寄せてふんっと鼻から息を吐き、どんっとソファーの背もたれに背中をつけると長いおみ足を組んだ。
わざと囮にしたわけじゃないってことはわかったけど、なんかちょっと態度悪くない?
「小林さんが助けてくれたのは偶然?」
「偶然だと思う。小林さんはうちとキネックス社との関係は知っていたけど。だからあそこで望海に声をかけてくれたのはあの人の勘なんだろうな。すぐに常務に連絡してくれたらしいし。助かったよ」
ああそっか。
何だか妙に納得した。
怪しい動きをしている会社の社員が自社の社員をしつこく誘っている現場に居合わせてすぐにデキる会社員として正しい判断をしたんだ。
余り面識のない私を夕食に誘ってくれて帰りのタクシー代まで出してくれたのはそういうことだったのか。
ちょっとときめいてしまった自分が恥ずかしい。
そっか、そっか、そういうことね。
はあああああーーーー
思いきり大きくため息をついて私もソファーの背もたれに身体を投げ出した。
「疲れたわ」
うん、もう何もかも。
疲れた。
色々理解できないし、理解しようと思ったらかなり頭を使わなきゃいけないし、そのーーー緒方さんの気持ちっていうのにも何か反応してあげないといけなくなる。
もう無理。
キャパオーバー。
ただの会社員が巻き込まれたにしては事が大きすぎる。
「帰ります」
「ちょっと待て」
ソファーから立ち上がった私の手を緒方さんが掴んだ。
「もう疲れたから帰りたいの。いいでしょ」
これ以上話すのは無理だと態度で示したつもり。緒方さんの好意にもどう返事をしていいのかわからないし。
本音を言えば、もう考えるのは嫌でここから逃げ出したい。
気のせいか足もじんじんする。
「俺はもう少ししたら会社に戻ってしなきゃならないことがあるんだ。帰りは明け方か明日の朝になる。だから望海はこのままここに残ってくれ。夕食はもう届いているし、泊まりに必要な物も全部あるから。キッチンも風呂もベッドも自由に使ってくれていい」
「なにを言ってるの?」
「だからこの週末ここで過ごして欲しい。怪我のお詫びに世話をさせてくれ」
「ううん、そんなのいらないし。私は疲れたから帰りたいの。もう1人になりたいんだけど」
「そうはいかない。足、痛むんだろう?ここのバスルームなら望海の部屋のより広いから足を上げて浴槽に浸かることもできるし、夕食も作る必要はない。寝室も望海が1人で使ってくれ。俺は帰ってこられるか怪しいし、帰ってきても絶対に寝室に入らないと約束するから。俺は会社に戻らないといけないから望海は帰らなくてもここで1人になることができる」
「そういうわけにはいかないわよ。メイクも落としたいし、着替えもしたい、化粧品もなければ着替えもないんだから不自由だわ」
「いや、それならここにある」
あるって何が。
まさか緒方さんの彼女の遺物とか。
そんなの絶対にお断りなんだけど。
いったいどういう神経をしてるんだと冷たい視線を向けてやると、緒方さんが席を立ち寝室のドアを開けた。
「この段ボールの山が何だかわかるか?」
そこにあったのは3個の段ボール。
いや、わかるわけないよね。
緒方さんは眉を寄せてふんっと鼻から息を吐き、どんっとソファーの背もたれに背中をつけると長いおみ足を組んだ。
わざと囮にしたわけじゃないってことはわかったけど、なんかちょっと態度悪くない?
「小林さんが助けてくれたのは偶然?」
「偶然だと思う。小林さんはうちとキネックス社との関係は知っていたけど。だからあそこで望海に声をかけてくれたのはあの人の勘なんだろうな。すぐに常務に連絡してくれたらしいし。助かったよ」
ああそっか。
何だか妙に納得した。
怪しい動きをしている会社の社員が自社の社員をしつこく誘っている現場に居合わせてすぐにデキる会社員として正しい判断をしたんだ。
余り面識のない私を夕食に誘ってくれて帰りのタクシー代まで出してくれたのはそういうことだったのか。
ちょっとときめいてしまった自分が恥ずかしい。
そっか、そっか、そういうことね。
はあああああーーーー
思いきり大きくため息をついて私もソファーの背もたれに身体を投げ出した。
「疲れたわ」
うん、もう何もかも。
疲れた。
色々理解できないし、理解しようと思ったらかなり頭を使わなきゃいけないし、そのーーー緒方さんの気持ちっていうのにも何か反応してあげないといけなくなる。
もう無理。
キャパオーバー。
ただの会社員が巻き込まれたにしては事が大きすぎる。
「帰ります」
「ちょっと待て」
ソファーから立ち上がった私の手を緒方さんが掴んだ。
「もう疲れたから帰りたいの。いいでしょ」
これ以上話すのは無理だと態度で示したつもり。緒方さんの好意にもどう返事をしていいのかわからないし。
本音を言えば、もう考えるのは嫌でここから逃げ出したい。
気のせいか足もじんじんする。
「俺はもう少ししたら会社に戻ってしなきゃならないことがあるんだ。帰りは明け方か明日の朝になる。だから望海はこのままここに残ってくれ。夕食はもう届いているし、泊まりに必要な物も全部あるから。キッチンも風呂もベッドも自由に使ってくれていい」
「なにを言ってるの?」
「だからこの週末ここで過ごして欲しい。怪我のお詫びに世話をさせてくれ」
「ううん、そんなのいらないし。私は疲れたから帰りたいの。もう1人になりたいんだけど」
「そうはいかない。足、痛むんだろう?ここのバスルームなら望海の部屋のより広いから足を上げて浴槽に浸かることもできるし、夕食も作る必要はない。寝室も望海が1人で使ってくれ。俺は帰ってこられるか怪しいし、帰ってきても絶対に寝室に入らないと約束するから。俺は会社に戻らないといけないから望海は帰らなくてもここで1人になることができる」
「そういうわけにはいかないわよ。メイクも落としたいし、着替えもしたい、化粧品もなければ着替えもないんだから不自由だわ」
「いや、それならここにある」
あるって何が。
まさか緒方さんの彼女の遺物とか。
そんなの絶対にお断りなんだけど。
いったいどういう神経をしてるんだと冷たい視線を向けてやると、緒方さんが席を立ち寝室のドアを開けた。
「この段ボールの山が何だかわかるか?」
そこにあったのは3個の段ボール。
いや、わかるわけないよね。