エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
お見合い話と失恋

肩まで伸びた黒髪をふわりと巻き、ベビーピンク色のワンピースを身にまとった私の姿を見た母親が目を細める。

「とてもよく似合っているわ」

「ありがとう」

来月の六月に執り行われる親戚の結婚式に出席するために新調したミモレ丈のワンピースを、今日着るとは思ってもみなかったと考えながら、リビングのソファに座る両親の向かいの席に腰を下ろした。

仕事が休みの土曜日の夕方。家のリビングで私、(()(えき)美桜(みお))が普段より華やかな格好をしているのは、お見合い相手である(あさ)()()(たつ)(おみ)さんが突然家に訪れることになったから。

この縁談は『よつば銀行(ぎんこう)』の取締役頭取である私の父親と、古くからの知り合いである『アサヒナ()(どう)(しゃ)株式会社』の取締役社長を務めている龍臣さんの父親が勝手に決めたものだ。

両親には内緒にしているけれど、私にはプロのミュージシャンになるという夢を叶えるために、バンドの練習に明け暮れている五つ年上の『(りょう)ちゃん』というカッコいい彼氏がいる。

『メジャーデビューが決まったら結婚しよう』とプロポーズしてくれたし、私も彼を応援する日々に喜びを感じている。

涼ちゃん以外の人と結婚するなんて考えられなくて、「顔も知らない相手と結婚するのは絶対に嫌!」と猛反発した。その甲斐もあり、父親が「そうか、わかった」と納得してくれた。
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