エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
元カレの脅迫
本格的な冬の訪れを前に、黄色に色づく銀杏の葉を見た龍臣さんが感嘆の声をあげる。
「見事だな」
「はい。本当に綺麗」
田園調布駅から続く銀杏並木の紅葉は今まさに見頃を迎えており、太陽の日差しを受けて葉が黄金色に輝く様子は息を呑むほど美しい。
「たまには、こういうのもいいな」
「そうですね」
来年の六月に結婚式をあげることが決まり、これからなにかと忙しくなる私たちにとって、ふたりきりでのんびりと過ごす時間はとても貴重だ。
龍臣さんを独占できるひとときをうれしく思いつつ、手をきつく繋ぎ合って歩を進める。
「来月のクリスマスイブだが横浜のレストランを予約したから、そのつもりでいてくれ」
「えっ? お仕事は?」
突然のクリスマスデートの誘いに驚き、思わず足を止めた私に向かって彼がニコリと微笑む。
「ふたりで初めて過ごすクリスマスだからな。なんとしてでも早く切り上げるさ」
今年のクリスマスイブは金曜日。多忙を極める彼と過ごすのは無理だとあきらめていた私にとって、このサプライズはうれしい。
「ありがとうございます。とても楽しみです」
「俺も楽しみだ」
銀杏の黄色い葉と青い空のコントラストを楽しみながら、一ケ月後のクリスマスに思いを馳せて再び歩を進めた。