エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
十二月に入り、どこからともなく聞こえてくるクリスマスソングに耳を澄まして、ラッピングされたプレゼントを手に帰路につく。
今日は仕事が終わってから、龍臣さんに渡すクリスマスプレゼントを購入した。
彼がなにをほしがっているのか見当もつかず、ショップを何軒も見て回ったすえにネクタイを選んだけれど、これが正解なのかわからない。
あたり障りのないプレゼントを気に入ってくれるだろうかという不安と、ネクタイを身に着けるたびに私を思い出してくれたらうれしいという気持ちが入り乱れる。
そんな落ち着かない日々を過ごしていたとき、それは突然起きた。
クリスマスイブを三日後に控えた火曜日の午後六時すぎ。一日の業務が終わり、勤務先であるよつば銀行本社ビルの従業員通用口を出た先で思いがけず声をかけられる。
「おい、美桜」
「えっ?」
聞き覚えのある声に驚いて振り返ると、そこにはギターケースを背負った涼ちゃんの姿があった。
「久しぶりだな」
「う、うん。そうだね」
涼ちゃんにこっぴどくフラれてから、顔を合わすのは今日が初めて。目もとが隠れる長めのヘアスタイルは今も健在だ。
「あのさ、美桜に話があるんだけど、立ち話もなんだからあそこの店に入ろうぜ」
涼ちゃんが大通りに面したカフェを指さす。