エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
「仕事を終わらせてから急いで新幹線に飛び乗ったんだ。部屋を取ってある。話はそこでしよう」
彼が軽く手を上げてスタッフを呼び、バーの支払いを済ませる。
龍臣さんと会いたいという願いが叶ったのはうれしい。けれど、このまま立ち去るわけにはいかない。
「でも、彰仁さんが……」
「彰仁はもう帰った」
「えっ? そうなんですか?」
「ああ。実は彰仁も昼すぎまで大阪にいたんだ。仕事のメドが立ったからひと足先に帰ってもらって、俺が戻るまで美桜の相手をしてもらったというわけだ」
彼が長い脚を組んで今までの経緯を説明する様子を、信じられない思いで見つめる。
彰仁さんがスマホを持ってバーを出て行ったのは、龍臣さんがホテルに到着したのを知ったから。私たちをふたりきりするために気を利かせてくれたとわかっても、黙って姿を消すなんて水くさいと思ってしまう。
「彰仁さんにお礼を言いたかったです」
「そうだな。今度は三人でゆっくり食事でもしよう」
「はい」
今まで付き合ってくれた彰仁さんには感謝の気持ちでいっぱいだ。
「さあ、行こうか」
「はい」
ふたりで過ごす初めてのクリスマスイブに胸を躍らせ、龍臣さんの手を借りてソファから立ち上がるとバーを後にした。