エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
後日、芽衣に涼ちゃんを紹介してもらい、ライブハウスに足繁く通う。
デパ地下でお弁当を買って差し入れをしたり、衣装をプレゼントしているうちに楽屋に招待してもらえるようになって、涼ちゃんに付き合おうと告白されたのだ。
「彼氏は何歳なんだ?」
「二十八歳です」
「二十八でバンド活動をしているとは、随分と能天気だな」
彼が体の前で腕を組んで鼻先で笑う。
家賃と生活費、そしてスタジオを借りるお金を稼ぐために、涼ちゃんはコンビニでバイトをしている。
働きながらメジャーデビューを目指して練習に励む生活が、どんなに大変なのか彼は知っているのだろうか。
人を見下したような態度に気分が悪くなったとき、エントランスの自動ドアが開いて涼ちゃんが帰って来た。
奥二重の目もとが隠れる長めの前髪に、細身の黒のパンツスタイルがよく似合っている涼ちゃんはワイルドでカッコいい。
「涼ちゃん!」
会えてよかったと安堵して涼ちゃんに駆け寄る。しかし、その動きもすぐに止まってしまった。
バンドの練習帰りだと思っていた涼ちゃんの手にはギターケースはなく、見ず知らずの女性の腕が絡みついている。