エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
彼はホテルの部屋に私をひとり残し、『電話してくる』と言って外に出て行った。きっとそのときにウチに連絡をして、両親を安心させるために私が酔って眠ってしまったと嘘を言ったのだろう。

そして『今日はどうしても日本食が食べたかった』と言って、お寿司を食べていたのは、赴任先のドバイから帰国したばかりだったからで、一夜明けて私がベッドから抜け出しても目が覚めなかったのは、時差ボケだったに違いない。

変な意地を張らずにお見合い写真を見ておけば、彼とホテルになんか行かなかったのにと後悔してももう遅い。

ため息をついて封筒から釣書を取り出し、名前と生年月日を確認する。

落ち着きがある彼は年上だと確信していたけれど、私よりも十も年上だという事実に驚きつつ力強い手書きの美しい文字を引き続き追う。

現住所は青山(あおやま)で部屋番号を見る限り、高層マンションに住んでいるとわかる。

家族構成はご両親と三つ年下の弟さんがひとり。趣味はドライブ。アサヒナ自動車の次期社長らしい趣味だ。

一夜限りの関係だと思っていた相手が、お見合い相手の朝比奈さんだったという事実に戸惑いながら、穏やかに微笑む彼の写真を見つめた。
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