エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

お世辞に対してどのような返事をしたらいいのか頭を悩ませていると、彼の口からさらに驚く言葉が飛び出る。

「ひと晩を過ごした仲なのに、今になってひと目惚れだと告白するのは案外恥ずかしいものだな」

朝比奈さんがパンツのポケットに手を入れて下を向く。

イケメンなうえにアサヒナ自動車の次期社長である彼が、平凡な私にひと目惚れするなんてにわかには信じがたい。

返す言葉が見つからず黙り込んでいると、彼が再び語り出す。

「ドバイから帰国した足でキミの家に向かったのは、見合い前にひと目会いたいという気持ちを押さえ切れなかったからだ。そしてなにがあったのかわからないまま急いで後を追って、酔っ払いに絡まれていたキミを慌てて助けたというわけだ」

私たちの出会いは偶然ではなかったと知って驚いたものの、納得できないこともある。

「そうだったんですか。でも、私を知っていたのなら、自分がお見合い相手だと名乗り出てほしかったです」

事実を知っていたら、彼にお見合いの愚痴なんか言わなかった。

不満を口にすると彼がすぐさま反論してくる。

「打ち明けようと思ったさ。でもキミは見合いが嫌で家を飛び出したうえに、俺の写真も見ていないと言うじゃないか。ここで正体を明かさない方が、キミをより深く知れると思ったから黙っておこうと決めた」
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