エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
たしかに彼がお見合い相手だとわかっていたら、涼ちゃんと付き合っていたのを隠したし、ひと晩をともに過ごさなかった。
親切にされて気が緩んだとはいえ、自分の言動は軽率だったと後悔する。けれど、もともとお見合いは嫌だと思っていたし、涼ちゃんに未練がないと言ったら嘘になる。
「この縁談ですが、朝比奈さんの方からお断りしてください」
涼ちゃんを忘れられないまま結婚話を進めるのは気が咎めてしまい、縁談を白紙に戻そうと試みる。しかし彼は、私の思いを汲み取ってはくれなかった。
「なぜそうなる?」
「だって私は涼ちゃんにフラれたその日に、名前も知らない男性とホテルに行くような女ですよ?」
私から誘ったわけじゃないけれど、失恋のつらさを忘れるために彼の優しさを利用したのは紛れもない事実。
アサヒナ自動車の次期社長である彼の結婚相手に、卑怯でふしだらな女は相応しくない。
「彼氏がいたのは気に食わなかったが、きちんと別れたんだ。なにも問題ない。それにあの夜は、俺の彼女になったキミを抱いただけだ。これもなにも問題もないはずだが?」
彼の発言は屁理屈のように聞こえるけれど、間違ったことは言っていないし嘘もついていない。
口が立つ彼に戸惑っていると、思いがけない言葉が耳に届いた。