エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
「美桜さん。俺と結婚を前提に付き合ってください」
私の名前を初めて口にした彼のまなざしは真剣そのもの。真摯な態度と言葉に対して、私もきちんとした返事をしなければいけないと覚悟を決める。
親切で気遣い上手な彼のことは嫌いじゃない。でも私は、今年の春に大学を卒業したばかり。大企業の次期社長の妻になって彼を支えるなんて、世間知らずの私には絶対無理だ。
「私はよつば銀行の広報部で働く一社員でしかありません。朝比奈さんには私よりも、もっと相応しい女性がいると思います」
気持ちを落ち着かせて本心を伝える。しかし彼は、まともに取り合ってはくれなかった。
「美桜さんは俺が嫌いなのか?」
「そうじゃないですけど……」
「だったら、さっきから何度も言っているようになにも問題ないだろ?」
カッコいい彼は絶対モテるだろうし、結婚相手は選び放題のはず。それなのに私に執着するのは、交際を申し込んで断られたのが初めてでムキになっているからなのかもしれない。
強引に話を進めようとする彼のペースに飲まれたら、トントン拍子に結婚が決まってしまいそうだ。
「少し考えさせてください」
今すぐ答えを出す必要はない。少し時間を置けば気持ちも落ち着くだろうと思ったのに、彼は尚も食い下がる。