エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
アパレルショップの販売員として働く芽衣とは休みの日が合わず、一緒に食事をするのは就職してから初めて。
運ばれて来たレモネードと料理を味わってお互いの近況について話していると、テーブルの上に置いていた芽衣のスマホが短い音を立てた。
「あ、海斗からだ」
『海斗』とは、芽衣の就職を機に同棲を始めた彼氏の名前。ふたつ年上の彼から届いたメッセージを読む芽衣の表情が緩む。
「なんだって?」
「駅まで迎えに行くから、帰るときに連絡するようにだって」
「そうなんだ。ラブラブだね」
「まあね」
うれしそうにフフッと笑う様子を微笑ましく思っていると、芽衣が返信を終えてスマホをテーブルの上に置く。
「美桜の方は順調?」
涼ちゃんと別れてから一ケ月が経っても、あの日の出来事を思い出すのは今もつらい。けれど、親友の芽衣に隠しごとはできない。
「私、涼ちゃんにフラれちゃったんだ」
「えっ? 嘘でしょ?」
「ううん。本当。あのね……」
声を詰まらせながら、二股をかけられていた経緯を打ち明ける。すると、芽衣がバッグからハンカチを取り出して涙を拭い始めた。