エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

その悲しげな様子につられるように涙腺が緩み出す。けれど、ここで私まで泣き出したら収拾がつかなくなってしまう。

込み上げてくる涙をグッと堪える。

「芽衣。泣かないでよ」

どうにかして泣きやんでほしいと思っても、芽衣の瞳からこぼれ落ちる涙は止まらない。

成す術もなく涙を流す様子を見守っていると、芽衣の口から弱々しい声が漏れた。

「美桜がつらい思いをしているときに、そばに居てあげられなくてごめんね」

自分のことのように、私の失恋を悲しんでくれる芽衣の思いが心に染みる。

「ううん。心配してくれてありがとう。でもね、涼ちゃんにフラれたとき、ひとりじゃなかったから大丈夫だよ」

別れを告げられて泣くことしかできなかった私の隣に、朝比奈さんは常に寄り添ってくれた。

彼がいなかったらどんなに心細かっただろうと考えていると、芽衣が私の顔を見つめて首をひねった。

「ひとりじゃなかったって、どういうこと？」

ついさっきまで頬を濡らしていた涙はすでに乾いている。

縁談の話は後でゆっくり聞いてもらうつもりでいた。それなのに朝比奈さんの存在をほのめかすような発言をしてしまうなんて、そそっかしいにもほどがある。