エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

失恋したその日のうちに、涼ちゃん以外の男性と一夜を過ごしたと知られて軽蔑されるのは嫌だ。

「えっと……それは……」

必死に言い訳を考えたものの、咄嗟には思いつかない。

しどろもどろになっている私を見て、芽衣があきれたようにため息をついた。

「美桜。きちんと説明して」

「はい」

両腕を体の前で組み、ピシャリと言い放つ芽衣の様子は迫力があって逆らえない。

朝比奈さんが縁談相手だと知らずに、ひと晩ともに過ごした一連の流れをたどたどしく説明する。そしてついこの間、両家の顔合わせを済ませた話を終えると、今まで黙っていた芽衣が口を開いた。

「しばらく会わなかった間に、いろいろとありすぎてビックリしてる」

「ごめんね」

当事者である私ですら今も困惑しているのだから、芽衣が戸惑うのも無理はない。

目を見張る彼女の前で小さく肩をすぼめる。

「それにしても、縁談相手がアサヒナ自動車の次期社長なんてすごいね」

芽衣の言う通り、彼はたしかに社会的地位が高いけれど、そこだけに興味を持たれるのはなんだか悔しい。
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