エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
「朝比奈さんは少し強引だけど、困っている人を放っておけない優しい人なの」
朝比奈さんに特別な感情はない。それなのに、どうして彼を褒めてしまったのか自分でもよくわからずにいると、芽衣が意味ありげに含み笑いをした。
「へえ、そうなんだ。縁談って聞いたから無理やり結婚させられるんじゃないかって心配したけど、美桜が朝比奈さんのことをきちんと好きみたいで安心した」
芽衣にはまだ両家の顔合わせが済んだとしか話していない。
今は縁談の返事を待ってもらっている状態で、朝比奈さんに対して特別な感情があるわけではないと説明しようとした。けれど焦る私を気にも留めずに、芽衣が興奮気味に話を続ける。
「私、朝比奈さんに会ってみたくなっちゃった。今から呼び出せない?」
「えっ、無理だよ」
「どうして?」
今の時刻は午後七時三十分。すでに帰宅してくつろいでいるかもしれないし、そもそも縁談の返事を保留にしている私から連絡するのは気が引ける。
「約束してないのに急に連絡したら迷惑でしょ?」
納得させる言葉を口にしてみたものの、芽衣はちっともあきらめてくれない。